次世代に対する福島原発事故の重大な影響について 「日本放射線リスク評価委員会(JCRRA)準備会」の勉強会への報告(NEWS No.605 p08)

11月13日に、「JCRRA」という民間組織準備会の勉強会で福島原発事故による次世代への影響について報告させていただきました。JCRRAは原発推進派の民間組織「ICRP国際放射線防御委員会」に対抗して、初めて被害を受ける立場で被曝の評価体系の報告を出した「ECRR欧州放射線防御委員会」の精神を引き継ぎ発展させようと、琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬氏の呼びかけで今年2月22日に創設される予定です。

その勉強会責任者の山田耕作京大名誉教授からご指名で報告させていただきました。ズームでの会で、福島原発の被害者の立場で活動されている科学者・識者など70名を超える方の参加で開催されました。

この報告は以下のユーチューブにアップされています。報告が下手ですがご覧いただければ幸いです。2025年11月13日JCRRA準備会 第1回学習講演会 林敬次医師講演

既に当ニュース(放射線防御の民主化フォーラム2023-2330報告(NEWS No.579 p07)で報告しましたが、2023年福島市で開催された「放射線防御の民主化フォーラム」に招請していただき報告した内容を中心に、原発事故の次世代への影響に関する私たちの2論文の内容と、原発推進派の福島医大などの被曝による障害をごまかすための論文の初歩的な誤りを指摘しました。

報告内容

周産期死亡増>(Hagen Scherbらの論文)

福島原発事故後の被曝線量により、日本を大枠で高度・中等度・その他の地域に分け、死亡率の増加を、月毎の周産期死亡率での回帰直線で計算したところ、事故後に高度放射能汚染地域ではオッヅ比で約15.6%増加したことを解説しました。

環境省は一千万円までの研究費を出し、県立福島医大高橋教授が、我々の論文結果を否定するデータを出しています。このデータは、増加していることを隠すために、県別にデータを分散させ増加に統計的有意差が出ないようにしています。そのごまかしを共著者の森国悦氏が当ニュースで詳しく批判しています。

<死産も増加>

また今回は、Hagen Scherb氏らの分析では福島での死産率は、2011年以後にそれまでの傾向と比してオッズ比で1.33(95%信頼区間1.085-1.633)増加したとのデータも紹介しました。

<低出生体重増加>(Hagen Scherbらの論文)

低出生体重児は新生児期の障害が多く乳児死亡増にもつながりますが、その後の障害や成人病増につながるとされている重要な健康の指標です。これが、事故後に高度汚染地域(福島・宮城・茨城・栃木・岩手)では5.5%の増加をしています。その他の都道府県のデータを分析すると1μSv/時間(8.8mSv/年)当り、11%も増加していました。

<原発推進派の論文のごまかし>

福島医大を中心として「研究者」達は多くの論文を発表していますが、ほとんどは「福島県民健康調査」でのアンケート調査のデータを用いています。国連UNSCEARが、私たちの研究結果を否定するために引用した論文を検討しました。

その一つ、2014年のFujimori Kらの論文では、低出生体重児は、高被曝地域(「相双」と「いわき」)が他の地域と比べオッズ比が1.16倍で95%信頼区間下限が0.982、上限は1.375です。下限が1以上になると95%以上の確率で増加したことになりますが、0.982だから増加していないとは言えません。また、この低出生体重児の比率が2年間続き、調査を2年間すればオッズ比の95%信頼区間は(1.03から1.30)と下限が1を超し95%の確率で増加したとはっきり言えるのです。

また、死産に至ってはなんと同オッズ比が1.911も高汚染地域の方が他の地域よりその率が高いのです。これも、95%信頼区間が(0.72-4.84)なので著者らは「増加していない」とするのです。また、死産もその発生率が3年間同様なら、3年間の調査ではオッズ比は1.9倍で95%信頼区間は(1.12から3.2)になり95%以上で有意差があり「増加した」ことになるのです。

Fujimori Kらは、実際は差があるのに、差がないとする「第2種の過誤」という初歩的な間違いを起こしています。(前述の様に、科学的分析では死産は1.33で有意な増加を示していました。)この他にも、疫学の初歩的な誤りを論文を紹介、批判しました。原発推進派は、これらを使って、原発事故の健康被害を隠しているのです。

最近、福島医大安村誠司県民健康管理センター長は「放射線による死者はゼロ」公言しています。次世代を担うはずだった先の周産期死亡や死産の増加も無かったとしているのです。また、原発推進派の福島県での死亡が、放射線ではなく「避難」よるものだとの論文が多数出ています。今後、この問題も含めて被曝による被害を明確にする研究が必要であることを指摘させていただきました。

今回の勉強会の準備していただいた皆さん、下手な話に耳を傾けていただいた皆さんに感謝いたします。

(はやし小児科 林敬次)