4月1日定期接種開始の妊婦へのRSVワクチンは直接的な益はなく、喘息を防ぐとの証拠もない(NEWS No.607 p05)

RSウイルス(RSV)は、特に3か月未満など早期乳児期には、肺炎や気管支炎を引き起こしやすいウイルスです。とはいえ、3歳までにはほとんどのお子さんがこれに感染し、入院は2-3%、大部分は症状がないか軽症で終わります。RSVのワクチンはなかなかできなかったのですが、新しく開発された妊婦へ接種して赤ちゃんのRSV感染を予防するワクチンが4月から定期化されることになりました。高齢者用もありますが、今回は妊婦への接種を取り上げます。

ちょうど「大阪保険医雑誌」今年3月号には、「新生児・乳幼児におけるRSウイルス感染症と予防戦略~新生児科・小児感染症科医から~」と、「母子免疫 RSウイルスを知り、母子免疫ワクチンを考える RSウイルス感染症の予防戦略~母子免疫ワクチン意義~」の2文章を掲載しています。これらは、妊婦に接種するRSVワクチン(アブリスボ)を推奨する内容で、しかも、全ての新生児・乳児を対象にすることを勧めています。

<子にとって利益なく母体に不利益あり>

幸い、RSVワクチンの効果と有害性についての科学的な評価は、「薬のチェック誌」118号でされており、「アブリスボ」のランダム化比較試験RCTを検討し、「接種は推奨しない」としています。ぜひ「薬のチェック誌」をお読みください。「薬のチェック誌」の批判点は以下です。

1) 臨床試験のRCTの方法に問題があり。

2) RSV以外の病気が増える傾向あり、

3)早産全体のリスクが増える傾向あり、などの、批判的検討がされており、妊婦へのRSVワクチンを推奨すべきでないことが科学的に証明されています。

<コクランレビュー結果は信頼できない>

保険医雑誌の文章は、コクランレビューも紹介しています。その中で、「ただし、検討に用いられた6件全ての研究が製薬会社の資金提供(第Ⅱ相3件、第Ⅲ相3件)であった。」との注目すべき記述がありました。要は、コクランレビューはそれらの製薬会社による強い影響を受けたRCTをレビューしており、それは薬のチェック誌が指摘している臨床試験そのものの問題点との関連がありそうです。

タミフルでも、コロナワクチンでも、企業側が隠していたが闘いで開示させたデータを含めての分析では、前者では主に効果が否定され、後者で主に有害作用が多数隠されていたことは今では明白になっています。

しかし、コクランレビューの「要旨」では、「RSV関連下気道疾患及び乳児の重症例が減少しました」とし、資金提供の問題や、「薬のチェック誌」が指摘する問題点について触れていません。コクランは全ての元データの公開を要求し、これらを精査すべきであり、開示されなければそのレビューの結論を保留すべきです。

以上は、RCTによる「効果・有害作用」に関してですが、ここではもう一つのあいまいなデータを基にした、あたかも喘息発症を予防するかのような宣伝について批判します。

<喘息を予防する可能性は少ない>

先の「大阪保険医雑誌」の文章が「急性期の重症化予防のみならず、その後の喘息様症状や喘息発症の抑制にも寄与する可能性を示している。」後者の文章では、「また、RSVに感染した新生児ならびに乳幼児では将来の喘息発症リスクが上昇しやすい。」と、スェーデンで「RSVで入院した子は喘息を発症率が高かったから」、RSV ワクチンがそれを抑えると、論理を飛躍・歪曲しています。これらは、RSVワクチン接種を増やすための宣伝の一つと思われ、ネット上でも流されています。(https://onizawa-fc.com/rs)

その根拠づくりのようなRuixue Ma et al.は025年発表の論文(Ann Allergy Asthma Immunol1135(2025)268-275)で、RSV感染で入院・重症・上気道炎があった子どもを追跡した文献をあげ、その子らは喘息罹患率が高かったから「RSVワクチンおよびモノクローナル抗体は、RSVに関連する重篤な呼吸器症状や入院を防ぐことができ、長期にわたる気道疾患の負担を軽減する可能性がある。」としています。

しかし、これには別の視点からの検討が必要です。「乳児早期にRSV感染症と診断されたお子さんは、元々喘息になりやすいお子さん」とも考えられます。Timira Amram et al. (Pediatric Pulmonology 2025;60e\:e27474)は、イスラエルの全国的統計で、RSV感染率が低かったコロナ期間中(202003-06)で子どもと、RSV感染率が高かった時の子どもの感染率と、その後の1-3歳で喘息での医療機関受診率を比較しています。そして、「生後1年間のRSV曝露量の減少は、喘息関連HCUの減少とは相関しなかった。これは、乳幼児期のRSV感染が、喘息の直接的な原因ではなく、基礎疾患の素因を示す指標として機能する可能性を示唆している。」と結論しています。「もともと喘息になりやすい子はRSV 感染で重症になりやすい」、ということでした。だとすると、ワクチンにより、喘息予防を示唆することは、全く誤っているわけです。不明な効果を示唆することは中止すべきです。

(はやし小児科 林敬次)