2025年の小中高生の自殺者数が538人、不登校も小中高生で35万人、いじめも76万件で、いずれも過去最多。せき止めや解熱鎮痛剤などの過去1年以内の乱用経験ある中学生が1.8%、高校生では1.4%だがうち約10%は週数回以上使用している。生きづらさを抱えている人がハマりやすいのが、ギャンブルをも含む依存や乱用だ。
日本では政府公認のギャンブルが6つ(競馬、競艇、競輪、オートレース、スポーツ振興くじ、宝くじ)と、ほかにパチンコ・パチスロがある。この7つ以外は犯罪だが、日本はギャンブルを奨励して、6つの公営ギャンブルをしやすくし、パチンコ・パチスロも自由にさせ、2030年には大阪にカジノもつくるとしている。日本で初めて合法の上でギャンブルを正業とする会社がカジノという賭場を運営できるようになるという歴史の変換になる。
日本では、ギャンブルにハマっている人の数は約200万人、違法のオンラインカジノの経験者は380万人といわれる。ギャンブル依存症には簡単になれて、治すのが難しい。
ギャンブルとは、偶然の結果を予想して、勝ったり当たったりすればお金や品物がもらえるしくみをいう。人間の歴史の始まりと同時に生まれたといえるが、のめりこんでしまうとなにもかもなくしてしまうおそろしさをかつての為政者は気づいていて、日本では689年の双六禁止令以来、法律によってギャンブルを禁止してきた。第二次世界大戦後、戦後復興のためとして、国が次々とギャンブルをつくりだした。2020年の新型コロナ流行を機に、公営ギャンブルの8割がオンラインになり、24時間、どこからでもギャンブルができるようになった。
ギャンブルにはハマってしまうカラクリがたくさんある。「ニア・ゲイン」や「ニア・ミス」と思わせて続けさせる。音や光、新奇性で興奮、快感を呼び起こす。賭け方を何種類も用意する。みんなが飛びつくような宣伝文句を用いる、登録初期に高い還元率が受けられる。レース場では、ギャンブルする人だけでなく、家族や子どもをもひきつけるような催しを工夫して、子どもを次の獲物にしようと策を練っている。
ギャンブルは何一つ生み出さない代物で、お客を呼び寄せてその人の財布に手を突っ込んで、お金をまきあげる装置であり、その人に借金をさせてまでまたお金をまきあげる。
ギャンブルにハマると、「自分の姿が見えず、人の忠告を聞かず、心の中で何を思っているのか言わなくなる」という「3ザル状態」になる。次に「金だけ」「自分だけ」「今だけ」の「3だけ主義」になる。ハマった人のすべてにはウソと借金が見られる。ギャンブルにハマると、脳の報酬系が変化して、ハイリスク・ハイリターンを選ぶようになり、脳は元に戻れないので治らないが、治療によってギャンブルせずに普通の生活はできるように回復は可能だ。回復は一人ではできないのでギャンブラーズ・アノニマス(GA)という自助グループに通う。アディクト(依存)から抜け出てコネクト(連帯)の生活をめざす。
ゲームもすぐハマるしかけで、ゲームにハマる道とギャンブルにハマる道はひと続きだ。
2024年ころからオンラインカジノが大きな問題になっている。スマートフォン1台で簡単に賭けられ、勝負はあっという間につき、気がつくと1000万円や2000万円の借金にもなる。スポーツ選手やタレントさらには小学生もハマっている。
ギャンブルにハマると、必ず借金ができ、借金を取り返そうとしてまたギャンブルして、借金が増え、考えつくのが窃盗、詐欺、横領ということになる。
ギャンブルにハマらないためにどうするか?第一は、どんな小さなギャンブルにも近づかないこと。第2は、お金を失うリスクはあまり考えずにお金が増えるのを期待してギャンブルするが、これは思い違いだと気づくことだ。第3は、ネガティブ・ケイパビリティという考え方。私たちは何か問題があるとそれをすぐに解いて答えを出したがるが、答えの出ない状態の中で焦らずにじっと耐え続ける能力を身につける。したい気分を宙ぶらりんのまま、ほかのもっと急がれること、もっと大切なこと、もっと根気のいることに手を出し続けることだ。そして、自分のハマっていることを正直に人に伝えることで、大きく崩れることはなくなる。
副題が「君に知ってほしい依存症の正体と身の守り方」とあり、小中高生に対してギャンブルとはなにか、依存症にならないためにどうすればよいかを、難しい用語を使わないものの最新の知見も踏まえて極めて明快に述べている。ギャンブル依存症に関して、小中高校生にとっては最良の予防教育の教材であり、当事者を支援する精神保健医療福祉関係者にとって良質の手引といえる。
(精神科医 梅田)
