アリセプトの日本での適応は「軽度及び中等度のアルツハイマー型痴呆(認知症)における痴呆(認知症)症状の進行抑制」とされている.実際にどの程度の効果があるのか?
CDSR(Cochrane Database of Systematic reviews 3rd Quarter 2005)では,軽度から中等度の血管性痴呆(VD)では,認知障害の評価尺度であるADAS-cogの認知スケール,MMSE,CDR-SB,臨床医の 印象であるCIBIC-plusにおいて12および24週時点で統計的に有意に改善をみた.軽度から中等度のVDでは,6週間の時点でIADL(道具的 ADL)のスケールではプラセボと有意差がない.
軽度,中等度あるいは重度のアルツハイマー病による痴呆(AD)では,10 mg(日本での認可用量は5 mg)つかうと,12,24および52週時点で,認知機能やADL,行動の尺度では益がみられた.患者自己評価QOLスケールでは有意差がない.介護者の QOLや負担,施設入所までの期間が延長するかどうかについては触れていない.
実際の臨床における意味を考えてみる.精神科でADを診る場合,とくに入院を要する場合は,認知機能の悪化によるよりも,行動心理学的症状(BPSD: 幻覚妄想や徘徊,問題行動など)が問題であることが多い.BPSDがあるADが必ずしも重症とはいえないが,この場合,症状や行動に応じて,抗精神病薬, 抗うつ剤などを副作用に注意しながら用いることはあっても,アリセプトの出番はほとんどない.
また,痴呆疾患治療(療養)病棟の場合,包括払いなので,効果の微妙なアリセプトは,高価な薬価の点(3 mg錠318.80円,5 mg錠482.40円)からも処方は制限される(月9564円〜14472円).
主な有害作用は嘔気と下痢である.しかし,05年6月には医薬品安全情報に横紋筋融解症での死亡例が紹介されている.
結局,ADでは服用中最大52週までは認知ないし行動スケールの点数上進行を抑制するようにみえるが,臨床的な意義は不明で,患者自己評価では効果がな い.介護者負担への効果も不明である.まして,VDその他の認知症に適応を安易に広げるべきではない.米国ではVDへの適応追加は承認されておらず,EU でもVDへの適応申請をエーザイ自ら取り下げた.認知症に対する在宅支援や施設の充実のほうが現実的であろう.