日本の痛風ガイドラインは信用できるか?
高尿酸血症にたいするベンズブロマロン(ユリノームなど)の位置について
本年に入って医問研ニュースの読者より「ユリノームについて取り上げて欲しい」という要望が寄せられていたのですが,取り上げ方に苦慮していました.今回一つの方向性を提示することにいたします.
ベンズブロマロンは痛風発作の予防のために使われる尿酸排泄促進薬です.そして「ベンズブロマロンによる劇症肝炎について」という緊急安全性情報が 2000年2月23日に出されています.その中で「警告」として「劇症肝炎等の重篤な肝障害が主に投与開始6ヶ月以内に発現していることから,少なくとも 6ヶ月間は必ず,定期的な肝機能検査を行うこと」「肝障害の発生についてあらかじめ患者に説明し,食欲不振,全身倦怠感等があらわれた場合には,本剤の服 用を中止し,直ちに受診するよう患者に注意を行うこと」の2項目が新たに追加されました.危険性を承知で使うようにという警告です.ちなみに「カレント・ メディカル診断と治療 日本語版」を見てみますと,ベンズブロマロンは記載されていませんでした.
一方で日本痛風・核酸代謝学会の作成した「高尿酸血症・痛風のガイドライン第1版」(2002年)には「現在用いられている尿酸排泄促進薬の中で最も尿 酸排泄作用が強い.…副作用の頻度は低く,現在本邦で最も多く使用されている尿酸排泄促進薬である.」としています.また「EBM正しい治療がわかる本」 に至っては,尿酸排泄促進薬でベンズブロマロンしか(しかも副作用の説明無しで)紹介していませんでした.このような違いがなぜ起こるのでしょうか?
効果の点ではベンズブロマロンは確かに強力です.世界的な標準薬となっているプロベネシド(ベネシッドなど)の投与量が500-2000 mg/日に対しベンズブロマロンは25-100 mg/日でしかありません.しかしこれだけでは推奨の理由になりません.有効で安全な用量を見つけ易いかどうかが選択の基準になるべきだからです.
医学中央雑誌Web版1983-2005年で検索してみると,ベンズブロマロンの副作用に関して12件の文献がヒットし,その内9件は肝障害ないし劇症 肝炎を取り上げていました.一方プロベネシドはヒット1件で固定薬疹の症例でした.Embaseで検索してみるとプロベネシドに関して64件ヒットしたの ですが,ベンズブロマロンについては9件のみでした.その中から “Kaufmann P. et al. Mechanisms of benzarone and benzbromarone-induced hepatic toxicity. Hepatology (2005) 41:4 (925-935).” について紹介します.
「ベンズブロマロンはアミオダロン(クラスIIIの抗不整脈薬)に構造が似ている.アミオダロンの肝ミトコンドリア障害性は良く知られている.…ラット肝 細胞による実験でミトコンドリア膜のポテンシャル減少はアミオダロン,ベンザロン,ベンズブロマロン(20 μmol/L)それぞれ23%,54%,81%であった.」
この様に報告し,ベンズブロマロンの肝細胞毒性がアミオダロンを大きく上回るものであるとしています.
結論はさらに検討を加えてから出したいと思いますが,欧米と日本での取り上げられ方の差,特にEBMを巡る取り上げられ方の差には本当に愕然とします.尿酸排泄促進薬を使う際には上述した諸点が十分提示・検討された上で処方されるべきだと思います.