小児科医として日頃の診療の中で、学校がらみの相談・診断書作成がやたらと増えている印象がある。子どもの特性を配慮した個別の教育支援として、無理やり「病名」が要求される、グレーゾーンという状態でも診断をつけて分離教育に導く流れがある。一方、通常学級も含め、全国の小中学校児童・生徒の不登校は、約30万人となっている。
一体、小中学校・義務教育はどうなっているのだろうか、学校現場の実情が知りたくて、昨年に引き続き参加した。
大阪会場には39名、横浜市フリースペースNPO「たんぽぽ」に13名、ズーム5名、合計57名が参集し、不登校当事者の中学生、保護者、学校現場の教師、大学院生、新聞記者など、幅広い層の関心の高さを示していた。
不登校の子どもに学校外・無償の健康診断を
不登校を含む欠席児の学校健康診断未受診問題を調査した社会福祉学専攻の大学院生からの報告では、不登校経験者のうち毎回受けていたのは12%、受けていないのは66%で、大人になって発覚した側弯症もみられた。不登校問題では、「原因探求」や「居場所の確保」「家庭支援」に注力されてきたが、「健康への権利」に気がついていなかった。2017年に不登校支援法である教育機会確保法が公布されたが「健康」については触れていない。自治体に問題意識の差があり、地域格差が広がる一方なので、国が、すべての子どもの権利として動く必要性があると主張された。
本来義務教育の一環である学校健診を、不登校で学校に行けないために受けられないことに疑問を持った不登校児の保護者からの要請で、「たんぽぽ」による請願運動が始まり、横浜市では教育委員会が医師会との話し合いを開始、川崎市では市長の見直し発言が出されるなど、マスコミにも取り上げられ、動きは全国数都市に広がっている。
「不登校の子どもの現実から学ぶ」視点での現場の取り組みが、行政や学校の改革につながる例として報告された。
「子どもは心を明け渡さざるを得ない?テスト漬けの学校」
続いて子どもの不登校、学校不適応を生み出している学校の現状について、保護者からの報告はまさに息の詰まるものであった。小学校3年生でテストが、1年間200日の登校日で40回行われ、週2,3回の時もあるとのこと。服装を正しくする、物の貸し借り禁止などテストの受け方にも細かい指示がつく、テストの結果が出ると各教科毎に10点ごとの分布表が張り出される、100点でないと勝ちにはならないと、「100点取れよシャワー」を子ども達は浴びながら学校生活を送り、悩みを聞いてもらい相談する余裕はない。「激動の社会を生き抜く力を育む」を教育目標に掲げている小中一貫教育もあるそうだ。
このクラスの成績は、担任の勤務評価となり、学力テストの順位は学校の評価となり、教師自身も子どもに向かい合い、意見を述べる余裕を奪われているのが学校現場である。
現場の教員、保護者、中学生の当事者などの報告の後、5つの小グループに別れ、感想や意見の交換を行い、このような交流の場が各学校現場でも必要だとまとめられた。
子ども達の不登校、学校不適応は、教育を取り巻く社会病理の反映である。伸びやかであるべき子ども時代を、この様に過ごさざるを得ないことに不憫さを感じる。異議申し立てをする子どもに、安易に診断名を付けて「ホッとする」前に、背景となる社会病理をしっかりと分析し共に向かい合うことが、小児科医・児童精神科医には必要ではないか。
入江診療所 入江紀夫