米麹サプリ死亡事件を生み出した科学を冒とくする似非EBMビジネス(NEWS No.589 p02)

紅麹サプリの被害者は増え続けており、9月17日現在、小林製薬からの報告は死者数392名、入院治療を要したもの502名となった。翌18日、厚生労働省のワーキンググループは初会合を開き、原因物質を製造過程で混入したアオカビ由来のペブルル酸とした。はて!1996年9,523名の健康被害を出した堺市学校給食O157集団食中毒事件での、カイワレ大根説のような幕引きか。

例会では8月に引き続き、消費者庁への届け出資料の根拠論文として、アンチエイジング医学(日本抗加齢医学会誌)にのみ掲載された「論文」を検討した。査読つき文献とされ表題は「紅麹のLDL-C低下効果:境界域高LDL-C血症の健常人を含むランダム化比較試験の層別解析」で、利益相反は小林製薬株式会社の受託研究。方法は健常人を対象に、8週間のプラセボ、紅麹100㎎、200㎎の3群で摂取による低下効果を接種前のLDL-C値で3層に分けて比較(下図)したものである。

対象は適格性評価されたとする112例であるが45例が除外基準で脱落し、67例をランダム割付したものを、試験中止した3例を除いた64例で有効性を評価したが、除外した45例の除外基準、および中止した3例の理由について論文には記載がない。45例もの脱落がある中で、各層の7例の少数の対象人数での値の低下をもって、正常値高めの健常人(LDL-C 120-139)において有意差がみられたとして、境界域の高LDL-C血症を呈する健常人における動脈硬化予防など、アンチエイジングの一環に紅麹が役立つと結論は飛躍する。

一方、安全性については腰痛、背部痛など自覚症状がみられるも、プラセボ群に比し紅麹群に問題があるというシグナルは確認できないとした。

論文発表以前に、以下に示す欧州での紅麹サプリへの重要な警告(ANSES)が出されているが、この紹介や論考はなく、これを隠蔽して、今回の被害を招いたなら、その社会的責任は重大である。

欧州では数年前から紅麹に警告(一部抜粋)
2014年フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)

「ANSESには「紅麹」を成分とするサプリメントの摂取に関連することが疑われる25件の副作用報告(多くは筋障害や肝障害)が届けられている。ANSESには、モナコリンを含む紅麹を主成分とするサプリメントの使用により、遺伝的体質や現在病気で治療を受けている特に感受性の高い集団に健康リスクを引き起こす可能性があると考えている。ANSESはこれらのサプリメントを用いる前に医師に相談するよう勧告している。ANSESは、スタチン(訳注:コレステロール値を下げる効果がある医薬品)を有効成分とする薬剤を服用している患者及び副作用(スタチン不耐性)によってスタチン治療を受けられなくなった患者(スタチン不耐性患者)はこれらのサプリメントを服用してはならないと指摘している。感受性の高い集団(妊婦、授乳期の女性、子供、青少年、70歳以上の高齢者や他の疾患を有する患者、グレープフルーツの高摂取集団など)もこれらのサプリメントを服用してはならない。」

2020年ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)

「健康影響に関してはモナコリン類が重要であり、紅麹中に最も多く存在するモナコリンKは、コレステロール値を下げることを意図した認可医薬品に使用されるロバスタチンと構造や作用が同じである。ロバスタチンの考えられる副作用は、頭痛、吐き気、下痢、衰弱、発疹及び筋痙攣である。稀に腎障害又は肝障害、場合により横紋筋融解症の原因となり得る。ロバスタチンによる治療は、常に医学上のリスク-ベネフィットを考慮して行う必要がある。(中略) 欧州食品安全機関(EFSA)は、サプリメント中のモナコリンKの安全性に関して評価を行った。その結果、健康にとって有害とならないモナコリン摂取量を決定することはできないと結論付けた。」【以上】

命より金のサプリメントビジネス

医薬品はもちろん、サプリメントにおいても、薬効があればその副作用には注意が必要である。日本では効果を過大評価し、安全性の過小評価がアベノミクスによる規制緩和で、野放しとなっている。これを補助するものとして、本研究の受託、論文の作成、査読、ジャーナル掲載、消費者庁申請に一貫した申請業務請負のビジネスがみてとれる。

特定非営利活動法人日本抗加齢協会

アベノミクスを推進する安倍内閣規制改革会議に2013年委員となり、規制緩和の旗振りをしたのが森下竜一大阪大学寄附講座教授である。本論文掲載の抗加齢医学会、および協会の副理事長を務めている。協会はどのような業務内容なのか、ホームページに紹介されている。

【国民の健康寿命の延長を目的とする産業は、わが国における成長戦略の柱です。おかげさまで機能性表示食品届出支援事業については、消費者庁のご指導の下、SR作成、届出相談、事前点検、エビデンス評価などで、企業のニーズに応えることができております。

2025年には大阪・関西万博「いのち輝く未来社会のデザイン」が開催されます。大阪・関西万博はコロナ後の日本の大きなイベントとして、大変期待されています。昨年は大阪・関西万博に向けての未来社会デザイン2022を開催し、メディアに注目されました。協会は日本抗加齢医学会と共に、万博の成功のため一層の貢献ができることを願っております。】

【出事前点検サービスについて  機能性表示食品の届出について、平成29(2017)年6月に閣議決定された規制改革実施計画において、「業界団体等による点検を経た届出書類について、消費者庁での確認作業が迅速に進む仕組みを構築する。」と定められました。】以下ビジネスメニュー

小林製薬は撤退したが、森下教授が総合プロデュースする「いのち輝く」関西万博には、科学を冒とくし、金のために「いのちと健康をもてあそぶ」利権が絡んでいることに注意が必要である。

入江診療所 入江