2011年3月11日の東日本大震災・福島原発事故から14年が経ちました。全国で2万7615人が今も避難生活を余儀なくされています。その避難者の大半が原発事故のせいです。やむなく帰還せざるを得なかった方も多数おられます。日本の法律では居住してはならない高い放射線量の地域への帰還だからです。一般の国民は年間1mSv未満が許された環境ですが、福島の帰還地域はその20倍まで可とされています。それは「緊急時」とされていますが、すでに14年の歳月がたちました。政府もマスコミも原発事故はもはや過去のことのように扱い、今年2月18日の閣議決定「第7次エネルギー基本計画」では原発依存を大幅に拡大しようとしています。これが緊急時でしょうか。
そのような違法を押し付ける政府・東電への補償を求める裁判所の判決も、多くが避難者や被害者の権利を否定しています。
それら政府・司法の基本姿勢の柱が、「現時点では、放射線の被ばくによる健康被害は認められていません。事故後の被ばく線量を鑑みても、今後の健康影響は考えにくいと評価されています。」(復興庁)です。このことにお墨付きを与えているのが、「国連科学委員会UNSCEAR」です。この評価が、ICRP(国際放射線防護委員会)と各国政府の政策の基礎となっています。甲状腺がんは通常年100万人当2-3人が、同100人にも増加しているのに「スクリーニング効果」による「過剰診断」として片づけ、次世代への影響として私たちの周産期死亡増加論文などを不当に否定しています。障害を否定した福島医大の多数の論文は疫学の基本的間違いや、未だに元データが公開されていないアンケート調査結果で、疫学調査として公正なものと言えません。
そのような中で、原発の再稼働が8か所となりました。次の焦点である新潟県柏崎刈羽原発に関しては、再稼働の県民投票条例の制定を求める直接請求署名は法定必要数の4倍以上の15万筆を超え、再稼働阻止の運動が進んでいます。これと関連した「2023年新潟県原発事故による健康と生活への影響に関する検証委員会」報告書では、「Cs(セシウム)-137の沈着と低出生体重有病率に正の相関の増加が報告された」と私たちの論文[H. Scherb et al 2020]が引用され、「原発事故の先天異常、出生への影響を明らかにするにはさらなる研究が必要である。」とUNSCEARや国・裁判所が「ない」とする健康障害に異議が書かれています。私たちの研究が今日の原発抑制に多少の影響を与えていると考えられました。
医問研は、これまで2冊の放射線被ばくに関する本の出版や論文の他、循環器疾患、喘息などの課題でも、このニュースに研究結果を残していますので、これを機会にぜひご覧ください。(http://ebm-jp.com/)しかし、日本の被曝による健康障害の科学的解明の研究はあまりにも少なすぎると考えられます。今も、福島と近隣の高被ばく者中心に放射線被曝の健康障害を明らかすることの意義はあります。甲状腺がんや各種がんの増加、次世代への影響、その他の研究は、原発事故被害者と原発廃止運動にも必要と思われます。
最近、沖縄の矢ケ崎先生を先頭にICRPに対抗する研究者などの共同の行動ができようとしています。これらの課題に、私たちと思いが近い方々と共に取み、何らかの貢献を続けられればと考えているところです。