「ガザで拘留されている小児科医・フサム・アブ・サフィア博士の拘留からの即時解放」 「ガザのパレスチナ人小児科医の逮捕に関する IPA 声明への賛同、周知」を求め、 4月、日本小児科学会総会で発言し要請しました。(NEWS No.597 p02)

3月号のニュ-ス紙面でお伝えしましたように、私たちは本年4月名古屋で開催された第128回日本小児科学会学術集会で訴えてきました。

昨年12月28日、イスラエルにより北ガザで最後の主要な医療施設であったカマル・アドワン病院への襲撃が行われました。この襲撃でカマル・アドワン病院の院長(パレスチナ人小児科医・フサム・アブ・サフィヤ博士)をはじめ多くの医療従事者が不当に拘束され、現在も釈放されていません。この不当な逮捕、拘留に対してフサム・アブ・サフィヤ医師とすべての医療従事者の即時釈放を求め世界から批判の声が上がっています、

国際小児科学会・The International Pediatric Association (IPA) は、ガザでのパレスチナ人小児科医の逮捕に関する IPA の声明を発し「昨年12月に不当逮捕・拘束されているガザのパレスチナ人小児科医・カマル・アドワン病院長の釈放」を求めています。世界の小児科医に抗議の声を上げる様に求めています。アジアからは、韓国、インド、インドネシア、マレ-シア、シンガポ-ルをはじめ、世界44か国、地域の小児科学会長が名を連ねています。

私たちは、日本小児科学会も速やかに、このIPA声明に賛同し学会長が名を連ねることが必要に考えます。また、日本小児科学会全会員に迅速に周知されることを求めました。

今回の要請文には、北は北海道から南は九州まで全国10道府県から23名の心ある小児科医の賛同を得、連名で要請することが出来ました。要請文に協力をお願いする中で全国の皆さまから大きな期待と応援の声をいただき、それを背景に小児科学会に届けることが出来ました。

賛同者の声は、以下の様なものがありました。

早いものでは連絡後、数時間で回答がありました。「了解しました。よろしくお願いします。」「大変ご苦労様です。関連の方々にも拡散いたします。」とても嬉しくなるrapidレスポンスです。

また、送付資料をじっくりとお読みいただいた上で「要請に関しては、ぜひ賛同させていただきたいと思います。」しっかりと受け止めていただけていると感じるレスポンスです。

また、「ガザ(と西岸地区)でのイスラエルによるパレスチナ人ジェノサイドは歴史に残る戦争犯罪です。しかもその犯罪は、子どもを殺意をもって故意に狙った戦争犯罪です。イスラエルにも小児科医はいると思いますが、現在のイスラエルの指導者にはパレスチナ人は人の皮をかぶった獣としか見えないほど倫理的退廃また崩壊が生じていると思います。これを看過することの是非も問われていると思います。」と熱い思いを語っていただきました。

一方で、「日々ガザで起きていることに心を痛めていますが、無力感でいっぱいです。要請文に署名、添付しました。よろしくお願いします。」「ガザ侵攻からトランプ当選、そしてCDCやNIHの解体には言葉もありません。小児科学会には行けませんが何らかの成果があがるよう祈っています」と。ガザの惨状に世界や日本で影響力を持つ政治勢力やマスコミの多くが半ば黙殺を続ける中で、歯がゆい思をしておられる小児科医の仲間が、無念の想いを多数託してくださいました。この小児科医の仲間の想いを胸に小児科学会に臨みました。

また、小児科学会会場には、様々な事情(体調や家庭事情など)を抱えながら4名が集まり、総会会場で討議資料(要請文と資料で16Pの小冊子にまとめたもの)を配布することが出来ました。会場での手渡しに、ほぼ全員の方が受け取って下さり目を通していただくことが出来ました。小児科学会は総会と言う「予算や理事人事などを決める学会での最高議決機関」で訴えました。会場の来場者数:出席代議員と一般会員を合わせて250名程度の参加があったと思っています。全国80を超える大学医学部の小児科教授、国立成育医療センター(日本の小児病院のnational center)を始めとする小児センターの院長など全国の小児医療の指導的位置にある小児科医を網羅した集団を前に、学会長と質疑応答を含め約10分程度議論することが出来ました。この中で、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA・ウンルワ)保健局長の清田明宏先生から託されたガザ停戦に向けたメッセ-ジも読ませていただきました。

学会長からの回答は以下の内容でした。

1)「この件につきましては、人道的見地からも憂慮すべきことである。・・様々な憂慮は多くの会員の先生方が思いを共有されていることと思っている」と。

これは、昨年は学会で取り扱うべきか迷っている(ガザの問題は、学術団体がともすれば政治的問題であるとして避ける傾向があった)という表明でしたが、本年は、小児科学会会員の多くが関心、懸念、憂慮を持っており、学会全体が重大関心を持つ課題であると認めたことを意味します。

2)「子どもの健康と命を守る医療は、妨げられることは在ってはならず、どのような状況があっても守られるべきであり、この様な状況に心を痛めている。当学会は「小児医療の充実、子どもの健康、人権および福祉の向上、さらにこれらを社会へ普及啓発することを目的とする」としている。すべての子どもたちと医療者の安全と尊厳が守られる社会の実現に向けて活動を続けている」と。

これは、戦時下であっても、子どもの健康と命を守る医療は、妨げられることは在ってはならず、どのような状況があっても守られるべきである。何があっても、子どもの保護、健康、安全を提唱することは、小児科学会の使命であると会長が確認したことを意味します。

3)「今回のご指摘を踏まえまして、今後の行動につきましては、IPAなど関係機関の動向を注視しながら、本学会としてどのような活動が出来るか、慎重かつ迅速に検討する」と。

会員の関心の高さと内容の深刻さにおいて、小児科学会全体の問題であると認めさせたことは、賛同人23名の力が大きく働いたものと考えています。

IPA(国際小児科学会)声明、アジアの多くの国の賛同、米国小児科学会ですらも動いているという状況中で、日本小児科学会の孤立が浮き彫りなりました。さらに、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA・ウンルワ)保健局長のメッセ-ジも含めて国際的な力にどう対応するかを小児科学会に付きつけたことは、大きな圧力になったと考えています。

小児科学会の検討結果を待ちたいと考えます。引き続き、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

追記:今やイスラエルの爆撃は、避難民の避難所として機能している学校や市場もお構いなしに壊滅的な打撃を与えガザは日常が野外地獄と化している。毎日何十人ものパレスチナ人がイスラエルの空爆で命を落としている。ガザで経験している痛ましい現実の悲惨な映像が連日の様に届いている。

4月6日、ガザ中心部のアル・ブレイジ・キャンプで避難民の避難所として使われていた学校が攻撃を受けた。この攻撃により、約30人の命が奪われ、その多くは子どもだった。ガザの保健当局によると、イスラエルの爆撃により、4月7日だけでパレスチナの飛び地で92人が殺害されたが、これは悲しいことに、恐怖の日常だった(ルモンド誌2025年5月8日)。

これらのジェノサイド行為は爆撃に限ったことではない。イスラエル軍による封鎖で3月2日以降、食料が一片も入っていない。パレスチナ自治政府は水曜日、ガザ地区を「飢饉地帯」と呼んでいる。200万人以上の人口から必要最低限のものを奪うという野蛮な行為を行っている。世界保健機関(WHO)はガザの「200万人が飢えている」と警告し、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、国際法を無視し、民族浄化に等しい」と述べている。この封鎖は、ジュネーブ条約で明確に禁止されている戦争犯罪であり、ガザに対する「残酷な集団的懲罰」である。

国際的世論の力で、即時・恒久的停戦を実現しなければならない。

髙松 勇  たかまつこどもクリニック

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