医問研ニュース5月号の主張でNEJMエビデンス誌2024年1月に掲載された「15歳から26歳の米国女性における9vHPVワクチンの2回または3回接種の免疫原性」と題する論文について疑問を提起した。ここではその詳細を展開させてもらう。
HPVワクチンが世界に先駆けてUSAで認可されて約20年経つが、逆説的ではあるが、いまなおワクチン効果を論じる論文があらためて出されること自体が効果の曖昧さを示しているのではないかという疑問が出発点であった。
まず前段として2006年CDCが発表したLowly D.R.らのレビュー論文の中での子宮頸がんの一般情報を抜粋、紹介する。
HPVは世界の子宮頸がんのほぼ全症例の原因であり、頸がんは女性がんの死亡原因の第二位を占め(第一位は乳がん)、約10%を占める。頸がん発症の80%は発展途上国で発生。HPV感染から悪性化までは10年以上かかり25歳未満は非常にまれ。その後年齢とともに多くなる。性器HPV感染症のほとんどは良性、無症状で自然に治癒する。軽度の子宮頸部異形成に関連する感染症も多くが自然治癒。高度異形成の持続感染(6か月以上)は前がん病変として治療対象と認識されている。USA女性の性器HPV感染の生涯リスクは少なくとも75%と推定。
参考補足としてUSAでのHPV感染の自然経過、UKでの1971年から2019年までの子宮頸がんの年齢群別死亡率統計、2020年から2023年までの日本での子宮頸がん年齢群別死亡者数を示す。
次いでLowlyのレビュー論文の中でHPVワクチンが有効であるかという部分を紹介する。
HPVが頸がんの原因であることは認識されたが、全身性疾患及び性器の局所感染両者へのワクチンの有効性は不明。メルク、グラクソ・スミスクラインの両製薬会社はこうした中で持続感染症の発症率減少と低度、中等度、高度異形成(CIN1,CIN2,CIN3)の減少が示されたとして検査結果を発表。一方、感染から浸潤がん発症までは10年以上かかるとして発がんを評価項目とするのは非倫理的とした。が、よく考えると、ワクチンが持続感染をどれだけの期間防げるかの回答にはなっていない。さらに、最も問題となるのは、感染ウイルスの型の変化とワクチン効果の関係である。当時HPV16型、18型に対しては一定効果ありと両製薬会社は販売許可を申請し認可されたが、これ以外のウイルス型に対する効果が不明なことと、他の型のウイルスが替わってまん延しないかという懸念が現実となっていることである。Lowlyは2006年のレビュー論文の中で、USAなどの先進国では16型と18型がワクチンがCIN2+病変の60-70%を占めているため、ワクチン接種を受けた女性では、ワクチン未接種の女性と比較してCIN2+病変の総数が1/3から半数に減少するでしょうと推定した。
ここまで読み続けてくるとなぜNEJMエビデンス誌が2024年に論文を出したのかという疑問が氷解すると考える。つまり、2006年Lowly 論文のHPVワクチン効果の製薬資本の思惑のようにはHPVワクチンの効果は上がっていなかったということだろう。
2024年1月のNEJMエビデンス誌の当該論文「15歳から26歳の米国女性における9vHPVワクチンの2回または3回接種の免疫原性」を見る。現在まで米国では9価のHPVワクチンが9-14歳に2回接種、15-26歳に3回接種が推奨されている。NEJMエビデンス誌論文は15-26歳の2回接種群と未接種群との比較、対3回接種群と未接種群とを比較し、HPV感染の有無(中和抗体上昇で評価)の違いを見たRCT論文で、2回接種は3回接種と同様の反応を示したとされる。治験参加者は860名であったが、422名がスクリーニングで除外された。治験開始1か月、2か月に54%の脱落者がでた。そのためかはじめは20%の脱落者までは予想していたが6か月を超える長期の観察期間を確保して有意差ありの体裁を保ったRCT論文であり、科学性に欠けるといわざるを得ない。
しかもこのデータは、一大学の一医系学部からのデータであり、一般化できないばかりか、発表も含めてデータの扱いがすべて一医薬品メーカの認可が必要なものであり、非科学的と言わざるを得ない。(了)


