現行DPTワクチンの小学生・成人への接種は問題あり(NEWS No.599 p04)

今年5月号に、百日咳の治療と予防について報告しました。

今回は、乳幼児用だった三種混合ワクチンDTaP (「aP」は無細胞性百日咳:一般にはDTP)が、年長者用に改善されないまま、11歳以上の年長者や妊婦とその家族・医療従事者などへの接種が推奨されている問題を報告します。実は、日本以外のほとんどの国では、11歳以上の「年長者」用に抗原を少なくした年長・成人用三種混合Tdapが使用されているのです。

百日咳ワクチンは、乳児から90か月児までに、以前は3種混合DTaPとして、現在はそれにポリオとヒブを混合した5種混合として初回3回+追加1回の4回接種されています。その後、11歳以上-13歳未満では百日咳ワクチンが入っていないDT(ジフテリア+破傷風)が接種されています。

ところで、DTの接種量は0.1mlでありDTaP 0.5mlの5分の1です。その理由は、0.5mlではジフテリアワクチン量が多すぎ、発熱・局所の腫れなどの副作用が多いためであるとされているようです。

すると、小学生へのDTaP0.5ml接種は危いのではと思い、製薬会社に電話で問い合わせると「大丈夫」とのことでした。しかし、どのくらい「大丈夫」なのかを知りたくて、DTaPの小学生や成人への追加接種を認可したDTaP(商品名トリビック)の審査結果報告書を見ました。

<DTaPの年長・成人への接種を認可>

同報告書は、DTaP0.5mlとDT0.1mlの効果・副作用を比較しています。まず、添付文章に記載された抗原量は次表のように、ジフテリア抗原(Lf)はDTaPが10㎍で、DT(3.5㎍)の約3倍でした。破傷風の抗原量には両者に大きな違いがありませんでした。

次に、副作用の、客観性が高い「発熱」を比較すると(右上表)、「軽度」がDTaPの223人中7人に対しDTは222人中2人,中等度でそれぞれ7人対1人,重度で1人対0人でした。予想どおり、DTaPの方が発熱率は高かったのです。これが、ジフテリア抗原量の差だけかどうかはわかりませんが、DTaPの方が副作用が多い可能性が示されていました。

ところが、(審査)機構は「重篤な副作用はなかった」として、「心因性反応を含む血管迷走神経反射として失神が現れることがある。」との注意書きを前提に、11才以上13才未満だけではなく「(90カ月未満の乳幼児)以後の追加免疫には、通常0.5mlを一回皮下に注射する」と、11歳以上12歳未満のみならず、成人への接種の認可が追加されていたのです。なお、トリビックの添付文章では、11歳以上13歳未満は第Ⅲ相試験結果が記載されていますが、成人では第Ⅱ相結果だけが記載されています。

<海外は年長・成人用三種混合Tdapを使用>

これで良いのでしょうか?次に、海外ではこの問題がどうされているか見てみます。

アメリカで年長・成人に接種されている3種混合Tdap(下表ではADACELとBOOSTRIX)のジフテリア抗原が、それぞれ2Lfと2.5Lfであり、日本のDTaP(商品名「トリビック」)での10Lfの、4-5分の1になっています。不活化百日咳毒素PTも「トリビック」の3-9分の1になっています。

実は、このアメリカの年長者・成人用3種混合(Tdap)が世界標準のようです。国立感染研「2017 百日咳ワクチン ファクトシート」には、「2014年に発行されたWHOの百日咳含有ワクチン専門家会議資料によると、調査された国では、10代および成人でのDTaP接種は行われておらず、すべて(ジフテリア・百日咳抗原が少ない)Tdapが使用されていた。」と記されています。このワクチンは多数のRCTで、妊婦への接種で新生児の百日咳が減少するなど、成人への接種効果が証明されています。日本だけが、乳幼児用に開発されたワクチンを、何の改善もせずに小学生や成人の追加接種に使用するようになっているのです。

日本小児科学会は、現在11~12歳の定期接種となっている2種混合DTの代わりに 3 種混合DTaP接種を推奨しています。(2025 年3月29日 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会)

また、新生児が重症になりやすいので、妊婦・その家族や医療関係者へのDTaP接種を呼びかけています。とはいえ、「百日咳を含んだ成人追加接種用」のワクチンTdapがない日本では、追加接種の呼びかけは少々あいまいにならざるを得ません。2025年4月25日付の日本産婦人科学会の「乳児の百日咳予防を目的とした百日咳ワクチンの母子免疫と医療従事者への接種について」でも、欧米では(成人用)Tdapが妊婦に推奨されているが、日本では発売されていないので「DTaPの活用が考慮」されますが、「乳児百日咳の重症化予防効果は証明されていないことをご留意下さい。」と慎重です。産婦人科学会が危惧するように、日本のDTaPでは妊婦への接種による新生児感染の予防は証明されていないのです。

<成人にDTaPをするなら0.2ml?>

先の国立感染研のファクトシートには、国産のDTaPを11〜12 歳児(555 人)に接種し、DTaP 0.2 mL と DTaP 0.5 mL で十分な百日咳抗体価の上昇が認められた、111人の若年成人(平均年齢19.4歳)を対象としてDTaPの接種量を0.2 mLと0.5 mLの2群に分けて接種し、追加効果率はともに100%であり、差はなかった。副反応の出現率に両群で差はなかった、などを紹介しています。これらの結果からは、年長児や成人へは0.2mlの方が無難なようです。添付文章でも、11歳以上13才未満には0.5ml、成人への追加接種は、「通常、0.5ml」としており、この記述では、成人へは0.2mlが可能のようです。接種医は、当面は個別に判断して0.5mlにするか、0.2mlするかを選択せざるを得ない状況です。

<企業の都合より、市民の利益を>

効果なく有害作用が多大なコロナの「ワクチン」や「治療薬」などに多額の費用をつぎ込んでいます。

他方で、ワクチンでは例えば、「おたふくワクチン」は、海外製の極めて安全な「ジェリルリン株」などのワクチンが、世界標準になっているのに、日本ではそれらワクチンを国民に知らせていません。日本では、いまだに、日本製の髄膜炎などの有害作用が多いワクチンの「改良」研究がなされ続け、安全なワクチンの導入がされていません。

百日咳ワクチンに関しても同様の状況ができているように思います。百日咳ワクチンの小学生や成人対象の接種を推奨するのなら、まずは、年長・成人用の世界的なTdapワクチンを輸入して国民に提供すべきです。その上で、必要なら世界レベルの、より安全で効果的なTdapワクチン開発がされるべきです。

(なお、DTaPは2014年一時販売停止になりました、2018年から再開されています。)

(はやし小児科 林敬次)