小児科医としての日常診療で就学への不適応、不登校の相談が増え、特別支援学級、通級、放課後デイサービスなどの処遇のために診断書の作成が求められることが多くなった。なぜ子どもたちは学校へ行きたがらないのだろうか、なぜ学校は画一的な受け入れしかできないのだろうか、なぜ教育への受け入れに医者の意見が必要なのだろうか、と悩んでいる中で出会ったのが本分科会である。今年はZOOM参加であったが3回目となる。
今年の分科会は横浜のフリースペースたんぽぽをメイン会場に、ZENKO相模原会場、エル大阪会場をサテライトに、ZOOMを加え、当事者、教員、保護者など40人の参加があった。
パネラー報告要旨
- 1.不登校経験のたんぽぽOB: 登校できないことに後ろめたさは感じていた。不登校が良いとか悪いとかでなく、その子自身が安心していられる場所、安全基地が必要。
- 2.不登校の子を持つ保護者:不登校児への健康診断は前進をみたが、家庭の経済負担は厳しく、運営施設への経済支援が求められる。行き場がなく追い詰められている親子にとってフリースペースは必要である。
- 3.現職の教員:教員の働き方改革が言われているが、現実は子どもに向き合う余裕がない。いじめや体罰のアンケートの時間、テストがやたら多く、プログラミング、ITC、ネットリテラシーなどの研修に追われている。先生の仕事が溜まっていき人を増やせと言うと、特別支援サポーターや学びサポーターなどスクールサポートスタッフ(SSS)、スクールソーシャルワーカー、授業担当主事、校舎施設維持管理補助員、ITC支援員、中学校では部活指導員など、職場には教員よりも教員免許のない職員の方が多い。何を誰に頼むか解らないし、頼んでも「私の仕事ではない」などの混乱があり、それを調整する仕事がまた増えるという現状である。こんな中、職場での会議が一番削られており、メールでの連絡となり、論議をしつくして納得して頑張れる状況ではなくなった。子どものための話は一切できず、上から言われたことをこなすのが精一杯である。これらは教員を増しさえすれば解決する問題である。
- 4.市民の立場からー元学校関係者:コロナ禍前には優秀と思っていた子でも、コロナ後の不登校が増えたことから、登校している子にとっても今の学校が楽しい場ではなかったと解った。こども真ん中というが、学校では序列化され自己責任とされ、経済・お金が求めるものとなっている。子どものためには、まず教師が解放されねばならず、そのためには、保護者・市民の支えが必要である。
- 5.大阪の保護者:子どもたちにその日の気持ちを「心の天気」として晴、曇、雨、雷をタブレットに入力するよう強制されている。しないと名前を張り出され、掃除などのペナルティがあるという。担任には活用率を上げるよう圧力がかかっている。このような「心の天気」は、子どもの権利条約に反しており、心の天気のデータをみなければ子どもの気持ちが解らないのは教師ではない。
これらの報告から、学校不適応を示している子どもたちを取り巻く学校環境の現状の一端を知ることができた。
不適応の背景と子どもへの責任転嫁
診察室を訪れる子どもたちの不適応行動は、安全な居場所にならない学校への、その子なりの異議申し立てである。子どもの個性、特性を受け止め、成長発達を育む場としての環境を整えるべきである。不適応の背景を考慮せず、「うつ」「自閉スペクトラム症」「発達障害」などと安易にレッテル貼りすることは、子どもたちに自己責任を負わすことになり解決にならない。
増え続ける「不登校」「発達障害」を生み出す教育現場の病理を明らかにした分科会である。
入江診療所 入江