9月例会報告:カジノとギャンブル依存症(NEWS No.601 p02)

「いのち輝く未来社会のデザイン」を謳いながら、ガス漏れ、熱中症・レジオネラ菌・セアカゴケグモなど健康リスクの中を強行し、大阪関西万博が半年間の会期を終える。その裏で、万博はホップで、ステップとなるIR・カジノの工事が進められた。

ニューヨーク大学の文化人類学者ナターシャ・ダウ・シュールは、ラスベガスのギャンブル産業とギャンブラーについて著書「デザインされたギャンブル依存症」をまとめ、疫学として「問題のあるギャンブラーがごく少数とは、症状の判断基準を適応されたことがある一般人口の1ないし2%に加えて、比較的軽度ながら問題のあるギャンブラーとみなされた3ないし4%のことだ。ギャンブル人口の中では病的ギャンブラーの比率はもっと高く20%の評価もある。その比率に支えられる経済効果は、しっかりと確立されている。ギャンブルによる総収益の30%から、信じがたいことに60%ほどが、問題のあるギャンブラーの懐から出たものである。」とした。つまりカジノ産業はギャンブル依存症によって成り立ち、儲けのためのデザインにより再生産され続けるのである。

大阪でのカジノ建設を許さないため、ギャンブル依存症の危険性について、今後の取り組みのスタートとして、ギャンブル依存症問題を考える会(公益社団法人)や、東京都内で相談・治療を担う昭和医科大学附属烏山病院アディクション専門外来などの実績に学び、9月例会でギャンブル依存症の実態、現状の問題点についてまとめ、認識の共有を試みた。

コロナ以降の激増と若年化

コロナ以前のパチンコがスマホ1台でのオンラインギャンブルにシフトしている。公営競技も70~90%がオンラインとなり若者が増加の一途。

違法オンラインカジノは2021年、これまでの100倍に増え、米・独に次ぐ世界第3位となる。金融代行業者、ユーチューバー、アフィリエータ―などの加担が野放し状態で、規制が必要である。

低年齢化が進み相談件数の8割弱が20~30代を占め、年齢制限で出金できない高校生にアカウントを売買する業者までいる。

犯罪行為の相談は2023年は28.2%に達した。

オンラインカジノをしない人に比べしている人の犯罪率が高い。合法の金融機関から借りれる金額の少ない若者は、闇金融に手を出し闇バイトに誘われる。若者はギャンブル依存症の進行が速く、重症化し易く、取締り・規制が必要である。

借金額は近年、軒並み高額となり2023年は平均値が855万円。周囲がギャンブル依存症への正しい知識がないため家族や友人会社関係者がお金を貸し、借金を増やして本人を追詰めている。

考える会が2021年5月から23年4月の間に相談を受けた、ギャンブル等の理由で起こった事件簿(令和第2版)から特徴が窺える。

  • 横領等企業犯罪 157件
    • 銀行員21% 公務員13.4% 弁護士3人など
  • 強盗/殺人等重大事件 20件
    • 無職50% 会社員35% 大学生1人など
  • 窃盗/詐欺 84件
    • 無職30% 警察官10.7% 教員10.7%
  • 児童虐待・ネグレクト/児童被害 4件
  • その他(賭博)事件 21件
    • 警察官23.8% 消防士2人 力士1人

社会的立場によらずギャンブル依存症となっており、経済的に困窮し追詰められると重大事件を起こす危険性がみられる。

問題を起こした相談者のギャンブル開始年齢は20歳以下が84.7%であった。年齢とギャンブル問題のリスクの間には強い関係性が認められ、ギャンブル問題のリスクは若年者になるほど増加することが知られている。

若年層の依存行動への脆弱性については、若年層の脳は神経系の重要な成長期であり未熟であるがゆえに、瞬間的な意思決定に脆弱であり、依存行動に溺れやすい傾向にあることが臨床研究などで示されている。

ギャンブル依存症の危険因子を以下に示す。

  • Being under age 30
  • Being male
  • Having a family history of gambling disorder
  • Gambling at an early age
  • Personal history of substance abuse
  • Personal hisotry of another mental disorder
  • Having a highly competitive personalities
  • Having access to leagal/illeagal gambling fac.

ギャンブル依存症と併存する精神障害の国内外比較では、日本での研究・予防は遅れている。

自殺との高い関連性が示されている。

ギャンブル依存症に携わる昭和医大附属烏山病院の専門医の「国がIR(総合型リゾート施設)で、週3回に絞るからギャンブル依存症になりにくいので大丈夫なんて言っているのは、そのデータをどこかに出せよという感じで、すごくナンセンスです。」との発言が治療現場の声である。ギャンブル依存症を増殖させるカジノの建設は直ちに中止せねばならない。

入江診療所 入江