2025年8月、ZENKOの原発問題を考える集いに参加し、原発問題について様々な機会を通じて自分たちが学んできたことを皆に伝えることの重要性を実感した。2025年9月の医療問題研究会例会で、基礎から学び直すことが重要と考え、少し前のこととなるが、2013年、広島の小児科学会で自主開催した「全国小児科医の集い」で福島の小児甲状腺がんと放射能について皆で発表した内容を中心に紹介する。
まず福島の小児甲状腺がんが明らかに多発していることをグラフで示す。
福島県では、2011年の原発事故後、18歳以下の小児すべてを対象に甲状腺のスクリーニング検査を行った。小児甲状腺がんの頻度はもともと年間15歳未満で通常1-2/100万人いるかいないか、比較的頻度の高い18歳以上を含む15-19歳でも1.2/10万人(国立がん研究所より)である。ところが、福島の原発事故が2011年に起こった次の年から2015年までの18歳以下の小児甲状腺がんの罹患率は、2011年9月から2012年3月までの18歳未満の検査実施者38114名中10名が甲状腺がんだったことを皮切りに、毎年増加を続けてきている。上のグラフは、福島原発事故以前から行われていた全国がん罹患モニタリング集計(意図的にかどうかはわからないが、全国がん罹患モニタリング集計事態が2015年に打ち切りとなった)での、基準となる3県(山形、福井、長崎県)に対する福島県の18歳以下の甲状腺がんの罹患率の推移を示したものである。2012年が21.2倍、2013年が23.6倍、2014年5.8倍、2015年8.0倍となっている。
後述する津田敏秀教授の、甲状腺がんが3名発症したこの当時の推定によれば、福島の小児甲状腺がんはポアソン分布に従うと推定され、発症数が0例、1例など、25例までの時、99%信頼区間の下限はそれぞれ0.0、0.01、14.3例。したがって19歳未満の福島の甲状腺がんは多発であると結論された。(山本の参考 統計学入門 東京大学出版会第34刷)
実際のその後の経過を見ると、福島では第一巡目検査(先行検査)は2011年10月から2013年3月までに300476名が受診し2016年3月までに115名の甲状腺がんが、第二巡目検査は2014年5月から2016年3月まで、270489名が受診し、2016年12月までに69名、一巡、二巡目の合計で184名の甲状腺がんが診断された。ポアソン分布をはるかに上回る多発である。
次に日本小児科学会の「150ミリシーベルト以下の被曝ではがんの増加がないという主張」について。林氏は小児科学会がこういった主張を示したとされる広島、長崎の原爆被曝関係5文献を検討してみると150ミリシーベルトが被ばく閾値であるとする文献は一つもなかったと結論した。「日本小児科学会は主張で、約150mSV以下の原爆被ばく者では、がん頻度の増加は確認されていません」というが、これは150mSVががんの増加「閾値」であり、それ以下では増加しないということになる。ところがその根拠とされるべき21論文を見ると根拠を示しているところはどこにもなく、逆に「閾値があるとすれば40mSV程度だが、直線モデルより有意に適応できるものではない(つまり直線モデルより、データを説明できる理論とはいえない)など、根拠となる論文はない」となる。つまり、日本小児科学会は150mSV以下ではがんの増加は確認されていないとしているが、その根拠とされた21論文からはがん増加の線量閾値はないという結論にしかならなかったことが示された。
最後に岡山大の津田敏秀氏の講義から原爆被曝後のがん発症の0-100mSV問題についての講義をしめす。がん発生に100mSV 閾値があるという主張は間違いということを図表で示している。閾値なしの左図に比べ、右図が閾値あり主張の図示である。林氏の分析と合わせて100mSVに閾値ありという主張の誤りは一目瞭然である。
福島の小児甲状腺がんは、2011年の原発事故を原因として多発してきたことを、3人の講演を中心に医療問題研究会の9月例会で示した。福島原発事故から20年経たないのに、「原発事故による死亡者はいなかった」という主張や、「原発依存度を可能な限り低減する」方針から「原発の最大限活用」、「60年越え運転」や「建て替え、新設」に方針転換がされる中で、原発被害の事実である福島の小児甲状腺がんを振り返って、ここに示すことは私たちの今すべきことであると考える。
医療問題研究会 山本英彦


