インフルエンザワクチン(以下:イ・ワクチン)の宣伝が始まっているようです。厚労省は今年の使用本数を5293万回分と予想しています。(8月18日)
イ・ワクチンの使用量は、この10年では、2020年の6548万回分をピークに下がり続け、昨年は4581万回分。注射ですと1回3千円程度ですから、1600億円程度でしょうか。莫大なビジネスです。昨年10月号で批判的に検討した生ワクチンは1回で8千円と高価です。
今回は、これまで触れていなかった、米国のイ・ワクチン接種に関する、イギリス医師会雑誌BMJの副編集長Peter Doshi(以下:PD氏)の書いた興味深い論文を紹介します。
少し前のものですが、彼のイ・ワクチン批判は、私たちがしてきた批判とは違った視点でも語られています。BMJという権威のある医学雑誌だけに、風当たりも強いはずにもかかわらず、イ・ワクチンへの明確な批判をしています。
また、この論説は、タミフルやリレンザは、死亡や入院を減らさないことが、企業から提出を勝ち取った元データにより証明され、その記事がニューヨークタイムズ紙にも載った2013年に書かれたものです。インフルエンザが怖いというキャンペーン自体に対する批判的視点が社会に浸透した時のことですので、そのことを前提とした論述になっています。
<米国の接種義務化の根拠は質が低い>
まず、米国でも、インフルエンザワクチン接種の義務化政策が強化されてきましたが、この基礎となる研究を調べると、「当局者の根底にある研究はその質が低く、当局者の主張を実証していないことが判る。このワクチンは、主張されているよりも有益性が低く、安全性が低い可能性があり、インフルエンザの脅威は誇張されているように見えます。」としています。
<当初のターゲットは高齢者>
「米国でもインフルエンザによる死亡のほとんどは高齢者で、1984年の予防接種実施諮問委員会は高齢者に焦点をあて、その後20年間、・・・、主に重篤な死亡やリスクが最も高い人々に対するワクチン接種を目的としてきたが、・・」今日、勧告はそれには目をつむっています。
<観察研究の「効果」を大きく水増し>
しかし、CDCは「成人向けのワクチンは、重篤な病気や死亡さえも防ぐことができます。」とし、その証拠に2つの後ろ向き観察研究を示しています。」CDCは「多くの研究で、イ・ワクチンがインフルエンザ流行時に高齢者の肺炎、入院、死亡のリスクを軽減することが確認されています。」としています。しかも「あらゆる原因による死亡を防ぐことで27%から30%減少、つまり、インフルエンザだけでなく、あらゆる原因で死亡するリスクを30%減少すると計算します。PD氏は「少なくとも2005年以降、CDC以外の研究者は、インフルエンザが冬季の全死亡の約5%しか引き起こさないと推定されているのに、イ・ワクチンが全死因の50%を防げる可能性は一見不可能に見える。」と批判します。
<信頼できない観察研究>
これらCDCの主張の根拠は、観察研究で、これは、「健康な人が、そうでない人よりワクチン接種を受ける可能性が高い傾向の違いを適切に制御していないと異議を唱てきました。」(PD氏)
観察研究が信頼できないならイ・ワクチンが高齢者の死亡を減らすという証拠は、理論上RCTが何らかの光をともすかも知れません。
<高齢者のRCTはたった1件のみ>
しかし、高齢者を対象としたランダム化比較試験RCTは一件だけです。これは高齢者の死亡率や合併症を検出する力はありませんでした。しかし、高齢者への効果を科学的に示すことに当局は関心を示さず、米国国立アレルギー感染研ファウチ所長(当時)は、高齢者を対象としたイ・ワクチンのプラセボを対照とした研究を行うことは「非倫理的」だとして、(イ・ワクチンに効果がないことを隠すために)RCTの実施を止めさせていました。
<安全性も大変疑わしい>
安全性の問題の典型的な例は、前述のファウチが2009年のH1N1インフルエンザ予防接種の安全性を強調し、「ワクチンに関連する深刻な出来事を見ることは、非常に、非常に、非常にまれです。」と強調した。しかし、これはオーストラリアで、110人に一人が熱性けいれんを起こし、スウェーデンとフィンランドでワクチンと関連し青年の「ナルコレプシー」が急増(55000人に一人)し、接種は中止されました。
CDCの方針を頼りにワクチンの効果を主張する日本の「専門家」たちは、この論評を読んで反省すべきです。
<PD論文 https://www.bmj.com/content/346/bmj.f3037>
(はやし小児科医 林敬次)