自維連立政権が成立し、高市首相は10月24日、所信表明演説の中で健康医療安全保障として医療・社会保障分野について述べている。人口減少・少子高齢化を乗り切るために、社会保障制度における給付と負担の在り方を議論する、高齢化に対応した医療体制の再構築として入院だけでなく外来・在宅医療や介護との連携を含む新しい地域医療構想を策定する、医師の偏在是正対策を講じ、新たな地域医療構想に向けた病床の「適正化」を進め、現役世代の保険料負担を抑えると述べる。具体的には、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しや、電子カルテを含む医療機関の電子化、データヘルス等を通じた「効率的で質の高い」医療の実現等について、迅速に検討を進め、「攻めの予防医療」を徹底し、健康寿命の延伸を図り、「皆が社会保障の担い手となれるよう」取り組むとする。病床は減らす、OTC類似薬の保険外しも含めて、世代を問わず保険料と窓口負担は増やす、高齢者は長生きして社会保険料を負担せよと迫る。
自公維3党合意や、経団連の「全世代型社会保障」の報告では共通して「現役世代の社会保険料を下げる」ことに力点を置く。経団連報告書は、医療保険(組合健保)において、現役世代が負担する保険料の4割以上が高齢者医療に充当される、と高齢者が現役世代に負担を強いているかのように強調し、医療費については維新が、「(相対的貧困世帯など)ただ若いというだけで窓口3割負担を免れない。…資産があり、生活にゆとりのある年金暮らしの高齢者の多くが窓口1割負担」と不公平を煽り世代間の分断を図る。
厚生労働省がさっそく高齢者の窓口負担について、70歳以上で現役世代と同じ自己負担3割の対象者拡大などを狙う。現役並み所得がある高齢者はすでに3割自己負担だが、対象拡大には、維新が「社会保険料の真の負担能力を正確に把握するため」マイナンバーカードの100%普及、受益と負担の把握を強調するように、銀行口座との紐づけで資産状態をつかみ、負担増を誘導する狙いがある。負担対象の拡大は受診抑制をもたらす。OTC類似薬については今号の林さんの記事をご参照ください。OTC類似薬の保険外しは、薬を多く使う高齢者にだけ負担が増えるのでない。アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、上気道炎など、子どもや若者にもよく処方される薬剤も含み、これらの医薬品が自費になれば、自治体の子どもの医療費助成制度の対象外となってしまう。
赤字の公立病院は過去最悪の8割超となった。公的医療の危機を放置して病床削減を進め、一方でOTC類似薬の保険外しや国民の医療データの活用で、製薬・医療関連産業などにさらに儲けさせる狙いもある。
高負担からの受診抑制でなく、保険料の逆進性を改め、応能負担強化を行い、同時に、大企業・富裕層優遇の不公平税制を是正して医療費への公費支出拡大から公的医療拡充や医療の人材確保、科学的根拠に基づく適切な医療を必要な人に負担拡大なく提供することを求める。