肝炎訴訟経過

B型肝炎訴訟,最高裁で原告勝訴確定
C型肝炎訴訟,大阪地裁は国と製薬2社に賠償命じる

注射器が使い回されていた乳幼児期の集団予防接種でB型肝炎ウイルスに感染したとして札幌市の患者ら5人が国に賠償を求めた訴訟で,6月16日最高裁は 原告の主張を全面的に認め,国に総額2750万円(一人当たり550万円)の支払いを命じました。これにより国は感染者への抜本的な救済策を急ぐことにな ります。
1951年には注射器・注射針を一人一人代えることが推奨されていましたが,旧厚生省が注射針を一回ごとに取り換えるよう通達したのは58年で,しかも70年代半ばまで徹底されていませんでした。注射器本体の交換が行われるようになったのは88年以降です。
訴訟では,一審判決で原告の請求が棄却されたあと,2004年1月の二審判決では予防接種と感染との因果関係を認め,国に損害賠償を請求する権利が消滅 する20年間の除斥期間が経過していない3人への計1650万円の支払いを命じていました。今回の上告審では,除斥期間が過ぎていた2人の請求も認められ ました。判決は裁判官5人全員一致の判断でした。感染後長い時間を経過して発症する遅発性疾病をめぐる訴訟では,この流れがほぼ確定した考えられます。

続いて6月21日大阪地裁で,出産時などに止血剤として投与された血液製剤「フィブリノゲン」などでC型肝炎に感染したとして,患者らが国と製薬会社に 賠償を求めた薬害C型肝炎集団訴訟の初判決がありました。中本敏嗣裁判長は「国の権限不行使は著しく不合理であり違法だ」と述べ,国と製薬会社の責任を認 め,原告13人(請求額計7億5900万円)のうち9人に計約2億5600万円の支払いを命じました。部分的ではありますが国の法的責任が認められまし た。
今後,肝炎患者への救済がいかに進展していくか注視していかねばなりません。

B型肝炎訴訟の争点
<あ>予防接種と感染の因果関係
<い>除斥期間の起算点
札幌高裁判決
<あ>接種時期と感染時期が大枠で一致し,ほかに具体的な原因も見あたらないので,因果関係を認めるべき
<い>複数回の接種のいずれも感染の可能性がある場合,最後に受けた時とすべき
上告審 原告側の主張
<あ>輸血経験や母子感染もなく,予防接種以外の原因は考えられない
<い>感染者はウイルス感染時,患者は肝炎の発症時とすべき
上告審 国側の主張
<あ>70年代以前は,一般医療機関でも注射器の消毒は不完全で,予防接種以外にも感染の可能性があった
<い>感染者も患者もウイルスに感染した時。複数回の接種のうち,最初に受けた時とすべき
最高裁判決
<あ>予防接種以外の感染原因はうかがわれず,接種時の注射器連続使用で感染した可能性が高い
<い>筑豊じん肺訴訟などでの判断を踏襲,発症時から起算する

薬害C型肝炎訴訟の判決骨子
・フィブリノゲンについて64年(製造承認)時点,78年時点で後天性低フィブリノゲン血症の適応除外をしなかった国と製薬会社の賠償責任を認めることはできない。
・85年8月以降にフィブリノゲン投与を受けた原告9人についてC型肝炎ウイルス感染との因果関係が認められる。
・国は製薬会社と連帯し,87年4月以降にフィブリノゲン投与を受けた原告5人に賠償責任がある。

(参考:徳島新聞,読売新聞,毎日新聞等)

(2006年6月)