2月15日に、福島県県民健康調査の「先行検査」(以下、先行)「本格検査」(以下、本格)の12月31日現在のデータが発表されました。
先行は前回発表と同じです。
このデータを基に、本格と先行をまとめてみました。(表)
本格では、先行の2011年度の地域と12年度の地域を、2014年に合わせて検査し発表しています。
いつものように、年間発見率を見るために、それを2011年度と12年度に分けて計算しました。
がん患者数は11年度地域16人(前回発表では13人)、12年度地域29人(同12人)、13年度地域6人(同0人)の計51人でした。
受診者に対する発見率は対10万人当り、それぞれ、47.4、23.8、7.4でした。
本格の2次検査の診断はまだ60%しか確定していなく、以上の数字は残りの40%から一人もがんが発見されないと仮定しての数字です。
残りの40%からもこれまでと同率でがんが見つかるとすると、それぞれ58.3、 32.9、28.5となります。
なお、前回発表分を確定率で補正した発見率は、11年度地域55.3、12年度地域20.6でしたので、予想より多くのがんが発見されたことになります。(13年度地域は0)
11年度地域の本格は一巡目の先行から平均約2.5年、12年地域は同1.5年、13年度地域は同1.5年経ているので、年間の発見率はそれぞれ23.3、21.9、19.0となります。
先行の、対10万年間発見率は11年度33.1、12年度22.01、13年度13.3ですので、本格のがん発見率は11年度を除き、先行と近いものです。
本格がスクリーニングする集団は、すでに先行で5mm以上のがんが除外されていますので、本格で発見されたがんは、1)先行の後で大きくなった、2)先行の後に発生した、がんと考えられます。
もちろんスクリーニングですから見逃しがあることは常識です。
しかし、見逃しは本格でも起こります。
先行は112人からがんが見つかっています。
5%が見逃されていると仮定しますと5.6人が見逃されていることになります。
他方で、現在、結果確定率60%で、がん51人です。
本格も2次検査の大部分が確定すると80人程度のがんが発見されると推定できますので、4人が見逃されることになります。
ですから、見逃しによって、先行から漏れてくるがんの人数と同じ程度の人数が本格からも漏れていき発見人数は1-2人しか変わらないと考えられます。
(2巡目の発見率が高ければ見逃しの数は2巡目の方が多くなり、低ければ多くなります。)
本格で発見された大部分のがんは先行後に5mm以上に大きくなったがんか、先行後に発生したがんが急速に大きくなったかであることが確認できます。
先行が終わった時点では放射性ヨウ素がほとんどなくなっていましたから、本格で発見されたがんは事故後間もなくがん化し、先行後に5mm以上になったと考えられますが、確かなことは私にはわかりません。
いずれにしても、本格でも先行に近いがん発見率となる可能性が大です。
そもそも福島県・政府が「先行」と名付けたのは、そのがん発見率が「正常値」であるとの前提で、福島県の子どもたちの甲状腺がん頻度を調査するとしたものです。
他方で、本格は被ばくの影響を知るための調査として位置づけています。
または、先行で、がんを排除しておけば、本格では少数のがんしか発見されないと見込んでいたのかもしれません。
ところが実際は、先行、本格のいずれにおいても、極めて高頻度でがんが発見されてしまいました。
また、本格で多数発見されたことは、今後も繰り返しスクリーニングが行われれば多数のがんが発見される可能性が高いことを示しています。
本格検査結果 | 2014年度検査 | 2015年度検査 | |
2011年度地域 | 2012年度地域 | 2013年度地域 | |
対象者 | 49454 | 166758 | |
1次検査実施者 | 33721 | 121815 | 81059 |
2次検査対象者 | 332 | 928 | 559 |
2次検査実施者 | 279 | 711 | 182 |
2次検査確定者 | 270 | 672 | 145 |
がん | 16 | 29 | 6 |
0.000474482 | 0.000238066 | 7.40E-05 | |
対10万 | 47.44817769 | 23.80659196 | 7.402015816 |
対10万年間発見率 | 18.97927108 | 9.52263679 | 2.960806326 |
検査確定率で推定 | |||
発見率 | 0.000583437 | 0.000328758 | 0.00028536 |
対10万 | 58.34368516 | 32.87576985 | 28.53604718 |
対10万年間発見率 | 23.33747407 | 21.9171799 | 19.02403145 |
1巡目から | 2.5年後として計算 | 同1.5年後として計算 |
先行検査結果 | 2011 | 2012 | 2013 |
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対象者 | 47768 | 161135 | |
1次検診受診者 | 41810 | 139338 | 119328 |
2次検診対象者 | 221 | 988 | 1085 |
2次検診確定者 | 194 | 902 | 957 |
がん | 14 | 56 | 42 |
補正なし
発見率 | 0.000334848 | 0.0004019 | 0.000351971 |
対10万 | 33.48481225 | 40.19004148 | 35.19710378 |
対10万年間発見率 | 33.48481225 | 20.09502074 | 11.73236793 |
補正有り
発見率 | 0.000381451 | 0.000440219 | 0.000399048 |
対10万 | 38.14506962 | 44.02190796 | 39.90476239 |
対10万年間発見率 | 38.14506962 | 22.01095398 | 13.30158746 |
事故から1年後 | 事故から2年後 | 事故から3年後 |
「先行」は最終
「本格」28年2月発表
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次に、本格で発見された甲状腺がんが、どのように大きくなったかを視覚的にわかりやすいようにしてみました。
下図の縦軸は発見されたがんの直径です。
左の縦の太い線は先行で発見されたがんの平均径(丸)と最大値と最小値あらわします。
本格で発見されたがんの直径は右の縦棒で、最大、平均(丸)、最小で表しています。
これらのがんは、先行スクリーニングを直径5mm未満のためすり抜けてきたがんです。
それが、2年程度(厳密な数字はわかりません)で、右の縦線が表す大きさになったことを意味しています。
これらはこの後2年3年でさらに大きくなってゆくことが予想されます。
それでは、左の先行のがんの大きさとの関係をどう見るかについてですが、先行で発見されたがんの一部は、被曝以前から大きくなっていたのか、被曝後急速に大きくなる性質のがんが混在していたのか、いろいろ考えられるところです。
はやし小児科 林