世界的な環境疫学者が認めた福島原発事故による甲状腺がん異常多発(NEWS No.488 p05)

福島県県民健康調査で多数の甲状腺がんが発見されたことについて、政府・福島県はもとより、大部分の「専門家」も学者も医者も多発でない、多発かどうかわからない、被ばくと関連ないと主張しています。

しかし、以下の経過により、甲状腺がんの異常多発と事故が原因であることを認めた意見が、環境の毒を調査する世界の専門学者の間で圧倒的に多数派であることが明白になりました。

昨年9月、津田敏秀岡山大教授らの分析が国際環境疫学会の特別シンポジウムで論議され、10月にはその論文(以下、津田論文)が、ISEEの雑誌Epidemiologyに掲載されました。今年1月22日にはISEEが甲状腺がんの異常多発を認め、その他の被曝による障害を科学的に調査することを要求した書簡を環境省と福島県に送り、そして4月には、Epidemiologyの正式な論文として発表されました。

津田論文の結論は以下の通りです。
1)一巡目の「先行検査」で、中通り中央部では、全国平均の50倍の異常多発、
2)2巡目の「本格検査」では、最低12倍の異常多発(今は、もっと高いことが明確)、
3)中通り中央部の発見率は、福島県の相対的低汚染地域の2.6倍(地域差がある)。

ISEE書簡の骨子です。「環境疫学者を代表して、我々ISEE(世界最大の国際環境疫学者組織)は、福島住民において甲状腺がんのリスク増加が予想を遙かに上回っているとする最近の科学的知見を憂慮している。」最近の科学的知見(津田論文;著者)では他の地域の12倍という高いリスクである。福島原発事故が地元住民に与える長期的影響を監視する適切なデータや調査が不足している。そのため津田氏らの研究が行われ、2015年に特別シンポジウムで発表され、議論された。現在行われている甲状腺検診について、検診を受ける人たちばかりではなく、放射線障害についての国際的な知見を形成する意味でも大きな価値がある。さらに、政府が、原発事故による福島県の人々の健康障害を科学的に評価する方策の立案を求める。また、環境中の放射線被ばくを科学的観点から必須と考える。それらは、原発事故の健康障害を減らす方法に関する国際的な知識体系構築に非常に貢献する。そのために、ISEEは(環境疫学調査の専門家集団だから)日本政府を支援する、というものです。その上で、ISEEと共同の活動をするかどうか、するとすればどのような関与方法があるか知らせてほしい。と提案しています。(加畑氏訳を参照した)

環境省はこの書簡を無視しようとしています。しかし、これらのISEEの対応は、3月11日の報道ステーションの甲状腺がんの特集、日本テレビNNNドキュメント THE 放射能 人間vs.放射線 科学はどこまで迫れるか?という優れた報道番組にも反映されています。(いずれもユーチューブで見られます)また、「311甲状腺がん家族の会」が発足しましたが、この会の活動にも津田論文とISEE書簡は強い支えになると思われます。

はやし小児科 林