読者から「こむら返り」に対する漢方薬「芍薬甘草湯」の効果についてお問い合わせがありましたので調べました。
まず、世界中のほとんどの対照試験が集められているコクランライブラリーでは何も見つかりませんでした。もちろん、メドラインでも症例報告のみでした。
医学中央雑誌の検索では、透析患者に使用した症例報告が多く、よく効いたとされていました。比較試験は以下の2つのみでした。こむら返りのような自然に良くなることが多い症状では、偽薬と比較しなければ効果のあるなしは全くわかりません。
症例報告の中には、頓服治療で90.9%が約3分で疼痛消失とか、22例中20例が平均3.4+/-2.9分(SD or SEの記載なし)で疼痛が消失したとされていました。このあまりの即効性は、消化管からの吸収による薬効より、臭いや味などによるプラセボ(偽薬)効果だ と思われます。
比較試験としては、肝硬変に伴うこむら返りに対する「プラセボ対照二重盲検群間比較試験」(臨床医薬1999;15:499)(芍薬甘草湯52例とプラ セボ49例)がありました。悪名高い「全般改善度」による評価では大変改善したとされていました。しかし、唯一の客観的データ「筋痙攣の出現回数」では、 投与期間中の痙攣回数は芍薬甘草湯対プラセボが7.3回対7.9回で有意差はありませんでした。ところが、投与前の値が14.5回対12.2回なので、投 与前との差を比べると芍薬甘草湯が7.1回改善し、プラセボは4.1回となり、有意差があったとしています。
しかし、芍薬甘草湯に振り分けられた人たちは、統計的には有意ではありませんが痙攣回数が多い傾向(P=0.07)にある集団でした。自然に回復するこ とが多い症状は、最初が強いほど治癒した時との差が大きくなります。例えば、39度の熱が37度に下がれば2度下がったのですが、38度から37度では1 度しか下がっていません。どちらも治癒したのですが、下がった体温は前者の方が大きくなります。この薬に効果がある可能性は否定できませんが、より厳密な 検討が必要かと思われます。
副作用は、ステロイド様作用のある甘草が入っていますので、たった2週間の服薬で、1割(5人)に明らかな浮腫が出現しています。これらの人も含めて3人 にカリウムの低下、高血圧、尿蛋白が出ています。少々こわいですね。対照群は胃腸症状だけです。使用するとすれば、頓服で少量処方し、副作用には十分注意 すべきです。
もう一つのランダム化比較試験論文が手に入らず検討できていません(痛みと漢方2000;10:13-8)。論文をお持ちの方は医問研事務所まで送っていただければ幸いです。