本「まちがいだらけの予防接種」藤井俊介 著 さいろ社いのちライブラリー

本書は,娘さんを百日咳・ジフテリア混合ワクチンで重度の被害者にさせられてしまった著者の,現在進行形の集大成とも言える書である.

著者は,自らが健康な娘さんに予防接種をさせてしまい被害にあわせてしまったという慟哭のなかから出発した.全国予防接種被害者の会事務局長を勤め上げ,予防接種被害情報センタ−を組織し,その半生をずさんな予防接種をやめさせるための活動に捧げている.

個人的な体験にとどまることなく,真の意味で予防接種に科学のメスを入れた本書は,著者が対象とした子供を持つ親だけでなく,予防接種行政に携わるすべての人々,そして誰よりも自称専門家としてふんぞり返っている医療関係者が読むべき本である.

本書の中で著者は,予防接種について,安全性,有効性,必要性のすべてにわたって,疑問を投げかけている.「マヤカシモノ」の予防接種によって「やむを 得ない犠牲」とされた被害者は,本当にやむを得なかったのか?予防の基本である衛生環境の整備よりも予防接種は重要な方策なのか?など,うなづかざるを得 ない主張が続く.

例えば患者が皆無に近いのに日本脳炎やポリオを今日接種する意味はあるのかなど.ひとり数10秒の問診で安全性を診断できるのか?そもそも事前診察で副 作用が判断できるのか?私ども医療関係者も密かに感じているであろう疑問を著者は容赦なく突きつける.確かに,安全性や副作用の追求はおざなりであ る.100万人にひとりの確率と言うとき,100万人すべてに副作用を調査した医学文献など皆無である.有効性についても,ワクチンによる免疫系のかく乱 やワクチン接種と自然感染とを比較した場合の効果判定など,予防接種医療が検討してこなかった点からの指摘も重要である.行政の理不尽さの指摘はきわめて 具体的である.

本書は,おそらく著者ひとりの経験からは生まれなかった.多くの予防接種被害者と家族の生の生活を知り,考えぬいた中から必然的に生まれたものだろう.予防接種問題,ひいては社会の中での医療を考える際の優れた,我々の生き方を問う労作となったのはそのためであろう.

(Y)

医問研ニュース 2003年3月号