薬のコラムNo.131:インフルエンザ治療薬の過剰宣伝−注目すべき高頻度の副作用

1月30日発表の厚生労働省医薬品安全性情報184号には,インフルエンザウイルス感染症治療薬ノイラミダーゼ阻害薬(オセルタミビル,商品名タミフル)の「重大な副作用」として,

  • ショック・アナフィラキシー症状の症例,
  • 急性肝機能障害(総ビリルビン13.5 mg/dl)例,
  • GOT 6768 IU/L, GPT 3992 IU/L, T-Bil 3.3 mg/dlを呈した肝機能障害・黄疸の症例(血小板14.8万 /μL, Cre 9.1 mg/dl にて透析施行)
  • スティーブンス・ジョンソン症候群の症例

が報告されている.

2月3日の毎日新聞健康欄[インフルエンザ・撃退のコツ]では,「今シーズンは01年2月に発売されたタミフルが注目を集め」と記載し(ただし小児用は 昨年7月認可・輸入されたばかり),「発症から2日以内に飲めば,発熱期間を半分程度に短く出来る」との発売元・中外製薬のコメントを載せたうえ,「タミ フル21万人分緊急輸入」との太字見出しを出している.

翌日の同新聞1面では「インフルエンザ51万人」の大見出しのもと「インフルエンザ脳症と疑われる 死亡例は厚労省のインフルエンザ脳炎・脳症研究班が把握しているだけで,1月末までに0〜7歳の小児ばかり26人.昨冬の33人を上回るペース」と載せて いる.

このようなマスコミ情報に囲まれた親たちが,この時期の子どもの発熱に対してより一層切迫した気持ちで医療機関に駆けつけるのは無理ないが,この親たちの不安に応える力をどの程度この新しい薬に期待できるのであろうか?

コクラン・ライブラリでは1991年から1999年までのシステマティックレビューがなされているが,計1180人の健康成人を対象とした8治験では症 状の持続が24時間短縮され,副作用の頻度は低いが「吐き気」は目だって多いと記載されている.2000年2月に発表された,18歳から65歳までの 629人を対象とする1998年のオセルタミビル(タミフル)の治験では,罹患期間が偽薬群4.3日に対してタミフル群3日,38℃以上の発熱は服薬開始 12時間後ではともに50%前後だが,24時間後では偽薬群39%,タミフル群26%と報告している.またこの治験でも「吐き気と嘔吐」の頻度の高さにつ いて言及されている.(ちなみに,この治験の資金援助はオセルタミビルを開発したロシュであった.)

小児についての報告は少ないが, 1998年-1999年のインフルエンザシーズンに1歳から12歳の子ども452人を対象とした調査がある.37.2℃以上の発熱はタミフル群では44時 間で偽薬群より1日短い.5日間服薬してこの程度の差異なら特効薬とは言えない.また,先に述べた文献報告ではインフルエンザ脳炎・脳症に対する防止効果 は期待薄である.2002年2月報告された「脳炎を併発したインフルエンザB:オセタルミビルでの治療」では,オセルタミビルは血液・脳関門は通過せず, その役割は不明であると述べている.文頭に述べた「重大な副作用」が国外での報告に無いのは不思議であるが,この新薬に飛びつくことなく親御さんたちと話 していきたい.

(I)

医問研ニュース 2003年2月号