新型コロナウイルスは冷静に経過の追跡を(NEWS No.534 p01)

※本稿は、『医問研ニュースNo.534』2020年2月号に掲載されたものです。

新型コロナウイルス(2019-nCoV)の報道がうんざりするほどされ、インターネット上でも様々なニュースや説が飛び交っており、WHOの専門家はウイルスのパンデミックより本当でない情報の氾濫が問題、としているほどです。

2月23日現在感染者数/死亡数/重症者はそれぞれ中国(香港・台湾を除く)77,345/2,592/11,477人、日本+ダイヤモンド・プリンセス号146(+691)/ 1+3/ 26人、韓国763/ 7/ 7人、全世界35カ国に広がっています。

https://www.worldometers.info/coronavirus/

マスコミは隠していますが、2009年の「インフルエンザパンデミック」の時もひどい報道がされました。メキシコで死者が176人も出たとしてWHOがフェーズ5(パンデミック直前の兆候を示す)を宣言した次の日に、メキシコ政府は実は7人と訂正したとの極小さな記事がでました。それもそのはず、その大騒ぎは当時のタミフル開発会社の大株主ラムズフェルド国防長官ら関与したものでした。この時は、米CDC、WHO、日本の官・学会がこぞってこの騒ぎを盛り上げました。結果、タミフルなどの世界的な備蓄が決まりました。新インフルエンは普通のインフルエンザより死亡率が低くかったのに、です。

この時と違い、今回の新型コロナウイルス流行で得をする政府は無いように思われ、WHOも中国政府もそれほど大きなウソはないようには思えますが、それでも厳しい目で見て行く必要があります。特に、日本では憲法改悪、市民の権利を不当に奪うことや製薬会社の利益に利用するなどに対して十分な注意は必要です。

ご存じのように、コロナウイルスは「かぜ」の原因としてライノウイルスに次いで2番目ですが、SARS-CoVやMERS-CoV など極めて高い致死率のウイルス感染を引き起こして俄然有名になりました。今回のウイルスは前2者と比べて、症状が軽い人が多く、感染率も高いために中国では爆発的に広がりました。

インフルエンザでは、極めてまれにしかウイルス性の肺炎を起こさず、肺炎の多くは二次的な細菌感染(確認されただけでも75%)ですが、新型コロナウイルスは和歌山県の医師が突然肺炎で発見されたように、RSウイルスと似て肺炎を起こしやすいのが特徴です。しかも、子どもを除く若い人にも高い確率でウイルス性の肺炎を起こします。中国での、初期の41例の肺炎患者の報告ではICUに入った4例以外は細菌感染の徴候を示していません。(白血球正常・リンパ球増加、炎症反応検査procalcitonin正常値)

良い情報として、中国での患者人数増加率は大変低くなっています。他方で、韓国で急激に増加、日本もダイヤモンド・プリンセス乗客を除いても増加しています。ヨーロッパでは、イタリアを除いてあまり増えていません。

WHOの担当官は日本での対策が今後の焦点であると述べていますが、接触者不明の患者が増加しています。また、ダイヤモンド・プリンセス船内での感染対策の問題点を暴露されると、検査陰性の人はすぐに一般交通で帰宅させ、その家族に感染が広がっています。検査忘れまでするというずさんなものでなく、せめて感染対策のまともな専門家の意見を尊重した対策を取るべきです。

ところで、中国では多数の臨床試験が行われ、SARSなどで一定の効果を見込まれたlopinavir 、ritnavirなどの試験がWHOとタイアップして最も科学的なランダム化比較試験で開始されています。その他、多数の臨床実験がなされている模様ですが、詳細はわかりません。危険なことに、日本は自国開発の抗インフルエンザ薬アビガンの治験を実施し始めました。WHOとのタイアップもなしの「使った・治った・効いた」の非科学的な「3た」評価にならないように注意しなければなりません。

感染症学、疫学、薬学、臨床評価の世界的な基準で対策が進められなければなりません。

はやし小児科 林