入江氏の3月例会報告の補足 RED BOOKのVZVワクチン優先の方針提起は信用できない(NEWS No.595 p02)

医問研ニュース2025年2月号に入江氏の「水痘ワクチン定期接種化による帯状疱疹増加における社会的損失の検討」が掲載され、3月2日の医問研例会で入江氏の報告と論議がされた。入江氏の提起は、帯状疱疹を感染源とする幼児小児水痘症例の増加と、大人を中心とした帯状疱疹増加の裏返しである行政、業者、マスコミ一丸となった大人への帯状疱疹ワクチン接種拡大に対する第一線医療現場からの痛打であると同時に、混乱を極めている全世界のワクチンを中心とした水痘帯状疱疹政策に対する解答でもあると考える。この観点からアメリカ小児科学会(AAP)発行の感染症に対するバイブルともいうべきRED BOOKについての紹介と批判を展開する。

RED BOOKの記載を概括する。水痘、帯状疱疹は同じウイルスVZV(Varicella-Zoster  Virus)で起こる。VZV感染症はヒトからヒトにしか伝染せず、感染力は極めて強い。接触以外に空気感染も多い。本来、すべての乳幼児、小児は水痘に罹患することがほとんどで、一度罹ると免疫は一生続く。帯状疱疹に罹っている人から水痘未罹患の小児が水痘を発症することが判明したため、帯状疱疹と水痘は同じVZVによる疾患であることがわかった。

妊娠初期に水痘に感染した妊婦から胎児が感染し、胎児が先天性水痘症候群を起こすことがある。妊娠8-20週で感染すると2%に起こるとされ、妊娠28週までの報告がある。

VZVは野生株、ワクチン株(Oka株)いずれも感覚神経節に潜伏し、再活性化で帯状疱疹が発生する。帯状疱疹後、帯状疱疹後神経痛(PHN)を起こすことがある。小児はまれ。

水痘生ワクチン(Oka株ワクチン)は1995年の米国ではワクチン接種率が高く、すべての年齢層で水痘の発症率が98%減少した。水痘の発症率は発症のピークが10歳未満の子どもから10-14歳に移行した。野生株水痘への免疫は生涯続く。

その他免疫不全状態へのワクチン接種や薬剤や免疫グロブリン投与などが細かく記載されているが、いろいろなデータの元文献に行きつくことが難しいなど、ベールに包まれている部分も多い。根本には本来は免疫不全の小児を対象とした生ワクチンであるのに、小児から成人に、あるいは免疫能健常者へもワクチン接種拡大させている等の問題がある。例えば先天性水痘症候群の2%と妊婦年齢の女性の野生株水痘罹患率の低下との関連についての分析やデータ開示が曖昧な点などである。

ここでは宮崎スタディーによる帯状疱疹発生数を例に、BED BOOKがゆがめられている点を指摘する。

宮崎県では皮膚科学会が1997年から2017年にかけて、1000人年あたりの帯状疱疹発症数を調べた。それによると1997年4.43人、2017年6.555人と年ごとに増加傾向のあることが分かった。これはRED BOOKの結果に反する。

宮崎スタディーをみると、帯状疱疹ワクチン接種が増えてきた1997年以降、2017年までを見ても、帯状疱疹発生率は増加傾向にあることがわかる。

また、図2に各国における年齢群別の罹患率をみると、年齢増加につれ罹患率が増加することがわかる。

(図2) 北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域の帯状疱疹の年齢群別罹患率

(図3)に5-9歳の水痘年別入院数を示した。これは国立感染症研究所からのデータであり、「2015年から2019年にかけて、5-9歳群の年間報告数は横ばい」であると評価されている。

以上、3データについてではあるが、RED BOOKのデータとは異なっていることがわかる。それぞれ重要なデータであり、RED BOOKのVZV感染とワクチンに関するデータの信頼性については疑問を抱かざるを得ない。