百日咳の流行:その治療・予防(ワクチン等)(NEWS No.597 p04)

時々、百日咳が流行しているとのニュースが流れています。私自身も今年に入り百日咳のお子さんを数人診断しました。以前に生後1-3か月の何人かのお子さんを百日咳と診断し、すぐに病院に紹介しました。みなさん無事退院されていました。生後3か月までは無呼吸などに対処できるよう全員入院すべき、6か月までも重症化しやすいので発作が軽度でない限り入院観察するのが、世界的な対応です。赤ちゃんの場合はそれほど典型的な咳が少なくかつ早く見つけないといけないので、百日咳流行中の赤ちゃんの咳には緊張します。

大きなお子さんでも、咳はひどく出て、普通に眠ることができなくなり、他の日常生活も大変妨げられることがあります。典型的な症状は一息の間にケンケンケンと咳が続き、最後にヒューと息を吸い込み(Whooping)ます。そのため、百日咳は英語で‘Whooping cough’と命名されています。

正確な診断は百日咳菌遺伝子検査LAMP法で診断がつきます。しかし、症状が4週間続いて、やっと来院されるような方では、既に百日咳菌は無くなっているので、血液抗体検査などを参考に診断します。

死亡することもありますが、最近では非常に少なくなっています。1996-2021年で26人、乳児14人、1歳3人、65歳以上9人です。(薬のチェック JAN2023.Vol)

<治療>百日咳の原因は百日咳菌ですので、抗生物質を使います。百日咳菌は消えて移らなくなりますが、症状は続きます。第1選択薬はクラリスロマイシンなどマクロライドですが、最近は、耐性菌が増加しているようです。それ等への耐性菌が多いマイコプラズマと違って、解熱するかどうかで効果を見ることができませんので、第2選択薬に代えるのも大変難しいです。根本的には、いまだに続く、カゼや軽度の中耳炎に対する抗生剤の使用を止めることが重要です。なお、咳を止めるのに効果がある薬はありません。

<予防>感染者と隔離・手洗いなどの方法は、コロナ流行時に百日咳などが激減したことを見ると効果があるのでしょう。感染者への抗生物質の予防投与も含めて感染力のある初期に診断しなければならず、隔離も抗生物質投与も限界があります。

<ワクチン>日本での効果は下図のような歴史的な変化でみることができます。(小児感染免疫第20巻第3号)図の左端①の時期に導入された「全菌体」ワクチンは、イギリスの20万人にも上る乳幼児でのRCTでその効果を証明されました。

日本でも導入と共に患者数も死亡数も激減しています。しかし、このワクチンは重篤な副作用が多く、接種中止(図④時点)になったとたんに百日咳が激増し、現在のワクチンで接種が再開され(下図⑤時点)とたんに、激減したことで、効果が示されています。

<上側の棒グラフは患者数、下は死亡者数()内>

このような推移は、欧州での接種率の低下と共に百日咳死亡者数の増加し、接種率の増加と共に減少したことでも確認されています。また、罹患者の多くは未接種者や抗体陽性率の低下があることでも、その効果が推察されています。もちろん、欧米では多くのRCTが実施され、その効果を示しています。初期のワクチンの強い有害作用は、現在のワクチンでは相当抑えられており、世界的にRCTその他の調査でも検討されています。

Acellular vaccines for preventing whooping cough (pertussis) in children | Cochrane

ただ、百日咳ワクチンは今や5種混合に含まれていますので、他のワクチンとの複合有害作用となっていますので、その検出はむつかしくなっている点には注意が必要です。

現在、百日咳はワクチンを使ってコントロールすることが最も有効と思われます。日本では、抗体の低下した小学生に対しての再接種がだいぶ以前から検討されています。また欧米では、妊婦への再接種を推奨しています。

20250402_hyakunitizeki1.pdf

ただ、前述のように死亡率が極めて低くなっている現在、ワクチンの有害作用との十分な比較検討が必要になるかと思われます。

さらに、未接種者など接種希望者への百日咳だけのワクチンはなく、手に入る3種混合DPTも品薄で入手できにくくなっています。より重要なワクチンであるMRも武田製薬の製品の力価が弱いため販売中止で入手が困難になっており、本当に必要なワクチンが足りなくなる中で、不要・有害なコロナワクチンなどが高価な値段で販売されています。儲けが多けりゃそれでよいようなワクチン政策になっているのではないかと思わざるを得ません。

(はやし小児科 林敬次)