バンカーバスター爆弾は原発が作り出す放射性物質の武器(NEWS No.599 p06)

6月22日、アメリカがイラン攻撃に「バンカーバスター」爆弾を使って攻撃しました。イランの地下深くにある核施設を攻撃したことばかりが報道され、バンカーバスターが劣化ウランという放射性物質を使った爆弾であることは、全くと言ってよい程報道されませんでした。

本誌2023年4月号でイギリスが劣化ウラン弾をウクライナに供与することに反対する記事を書きました。今回の米軍のパンカーバスター爆弾も、原発から出たウラニウムの廃棄物「劣化ウラニウム」を使った放射性物質による爆弾です。

地下数十メートルも貫通させるため、この爆弾の先頭部分には、金属中最も硬いものの一つ、劣化ウラン鋼が使われています。硬い金属は他にもありますが高価です。しかし、これは極めて安価です。なぜなら、これはいわば危険な放射性産業廃棄物で捨て場がなく、原発企業は廃棄に困っている代物ですから。

原発では、U235含有率を天然ウラニウムの0.7%から3-5%(原爆は90%以上)に濃縮します。その濃縮過程のU235を0.2%残した廃棄物(ほとんどはU238;半減期45億年、時にプルトニウムを含むこともある)だからです。その廃棄物を買ってもらえれば、原発企業にとっては大変な利益です。

劣化という言葉でウラニウムの放射性物質でないかの印象を受けますが、まさにウラニウム兵器です。原発で使用したウランは放射能物質ですが、非常に硬いのでその砲弾は、鋼鉄で作られた戦車を、まるで「豆腐を貫く」ように穴をあけ、戦車内に入ります。左段下の図は、米軍のイラク侵略時のイラクの戦車の残骸です。矢印の穴が劣化ウラン弾によってあけられたものです。その貫通時の摩擦熱によってウラン弾は発火し、燃えるので、戦車内の兵士は黒焦げになります。

そればかりではありません。燃えたウラニウム弾は細かい粒子になって周辺の環境に飛び散ります。兵士や周辺住民は、その粒子を吸い込み体内に蓄積します。

ウランはアルファ線を放出し、その時に強力なエネルギーを放出しますが、これは紙一枚ほどの短距離も透過しません。〈下図〉

ところが、体内に入ると粒子のアルファ線は細胞と直接接するので強い放射線で細胞を死なせたり、遺伝子などに強い障害を与えます。

吸い込むと気道の粘膜などの細胞に障害を与え、血液に運ばれて全身にまわり、がんを誘発します。生殖器に入れば胎児の奇形を発生させます。これは、典型的な内部被曝による健康障害の例です。しかも、アルファ線だけでなく、その化学的毒性もあると考えられています。

ウラニウム兵器は、コソボで最初に使用され、1991年からの米軍イラク侵略(湾岸戦争)では膨大な量が使われ、世界的に問題となりました。その後、2001年からのアフガニスタンでもイラク以上に使用されたとの説もあります。湾岸戦争に参戦させられた米軍兵士に「湾岸戦争症候群」という多彩な症状を示す病気が多発しました。ウラニウム兵器がその原因でないかと、退役米軍の調査が行われました。

歴史的に、戦争で障害を受けた兵士の割合は、朝鮮戦争で5%、第2次世界大戦で8.6%、米軍が敗者で、かつ枯葉剤の散布などで米軍兵士が多く障害を受けたベトナム戦争で9.6%でした。ところが、驚いたことにイラクに圧勝した湾岸戦争ではそれまでの倍に近い16%もの障害者を出しています。イラク戦車に圧勝をもたらした劣化ウラン弾により、米軍兵士がウラニウム兵器により米軍の歴史上最悪の障害を受けたと考えられます。アフガニスタンでも湾岸戦争(GW)症候群が多発しています。

2021年のシステマティックレビュー、「イラクにおける兵器化ウランと健康への悪影響:系統的レビュー |BMJグローバルヘルス」では、「米国政府が資金提供した研究は、劣化ウランがイラク国民にもたらす健康リスクを否定しているが、反対派は、劣化ウランがイラクの先天性欠損症や癌の発生率の増加の原因であると主張している。」とし、結論では「入手可能な証拠は、イラク国民の劣化ウランへの曝露と健康への悪影響との間に関連性がある可能性を示唆している。」としています。ここでは挙げませんが、私達はその関連を否定する論文のごまかしをいくつか指摘して、2006年の日本小児科学会の集会で発表しています。

このウラニウム兵器で最大の障害を受けたのはウラニウム兵器が使われた戦場近くの住民だろうことは想像に難くありません。イラクのバスラでの胎児の奇形は1991年以後どんどん増加しています。(当初の少なさは戦後の混乱期で正確でないかもしれません。)

File:Basrah birth defects.svg - Wikipedia

このようなウラン弾の障害性が表面化するなかで、世界的にこの兵器への批判が強まり、地雷と同様に「非戦闘員に無差別な害を引き起こす兵器である」との認識が広まり、この兵器の禁止条約の制定運動が広まりました。

私達は、2002年からのアフガニスタン国際民衆法廷に資料として、劣化ウランの有毒性を証明したパンフレットを提出しました。(調査した大分部の文献は、その有害性を証明しており、有害性を否定する論文はほとんどありませんでした。)また、小児科学会でこの問題を取り上げ、日本小児総会会場などで、来日中のイラク人医師らの講演会などを開催しました。

さらに、2005年のブリュッセルの欧州議会議事堂と2006年の広島で開催された「劣化ウラン兵器禁止を訴える国際大会」にゼンコウの代表として小山氏、柳氏や林などで参加し、日本での取り組みを報告しました。ウラニウム兵器使用の一時停止を求める欧州議会決議が2003年から2008年に5回も可決され、2021年12月米軍が2026年までにそれを廃棄する計画を示しました。しかし、2023年にイギリスがウクライナにウラニウム兵器の供与を発表、今回イラクでバンカーバスターが使用されました。

このウラニウム兵器が極めて反人道的なものであり、かつ原発が生み出す放射性の兵器であることを考えなら、また核兵器そのものの使用の危険性まで高まっている今、ウラニウム兵器問題は反原発・反戦争の戦いの課題として取り上げられるべきだと考えます。

はやし小児科 林敬次

お詫びと訂正

7月号6-7ページ「バンカーバスター爆弾は原発が作り出す放射性物質の武器」の中で、バンカーバスター攻撃されたのはイラクではなくイランでした。お詫びして訂正します。

P6左段の1行目、2行目、P7右段の下から7行目のイラク→イラン