『ルポ 食が壊れる─私たちは何を食べさせられるのか?』
堤 未果 著
文春新書 900円+税
2022年12月
近所のスーパー2軒ともからコメ袋が消えたときにはビックリと不安・恐ろしさを感じ、積読のままになっていた本書の表題を思い出すことになりました。`22年12月発行にて、既に読まれた方々には申し訳ないですが、遅ればせながら紹介させて頂きます。
思い返せば‘23年5月から医問研ニュースで、松本有史氏((医)聖仁会松本医院)による「“食”の問題シリーズ」の報告がありました。
(現在は医問研ホームページで検索可能です。)
その① 「緑の革命」とは何だったのか?
その② 「種子の支配」についての歴史的経緯
~緑の革命からGMO(注)革命まで~
(筆者注)Genetically Modified Organisms
その③ 「GMO」の安全性について
その④ 危険なGMOとその規制緩和
その⑤ ゲノム編集技術(CRISPR-Cas9システム)について
「ゲノム編集と日本の食の危機」に対する言及もあり、重要な問題提起だったことを今頃になって本書を読みながら痛感した次第です。
スイスのダボスで開催される世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)の年次総会は「ダボス会議」と呼ばれています。コロナ渦中の`20年6月WEFは、新興感染症や気候変動など地球環境の悪化に対処するための計画「全ての人の運命を変えるグレートリセット」を提唱しました。
食システムのリセットを企図する組織「EAT」は「食のダボス会議」とも称され「将来発生する可能性のある食糧危機に対処する」とのこと。
資金は、マイクロソフトのビル・ゲイツ、穀物のカーギル、種子のシンジェンタ、畜産のタイソン、化学のバイエル(旧モンサント)、ユニリーバ、ワクチンのグラクソ・スミスクライン、流通のアマゾン、そしてグーグルからの協力ですが、各社からの投資では?
その流れを受けたように同年10月、日本では「フードテック)官民協議会」が設立され、政府トップの「グレートリセット」への協力宣言のもと、`21年5月農水省から「みどりの食料システム戦略」が発表されました。
Food Techとは FoodとTechnologyからなる造語で「食の最先端技術」の意味で、著者は「ロボットやAIなどのテクノロジーとバイオ技術を軸にした」戦略で、「最新のデジタルテクノロジーによる一元支配が、いよいよ食と農の分野に参入し、急速に勢力を拡大してきている」事態と警鐘を鳴らしています。
「食のグレートリセット」の世界で、「今一体何がおきているのか?」 アグリビジネス(注)は何を成そうとしているのでしょうか?
(筆者注)agriculture農業に関する経済活動
食に関するテレビ番組は満載で、話の種になる華やか、賑やかな雰囲気を放っていると感じます。本書各章の見出しには、①「人工肉」は地球を救う?——気候変動時代の新市場 ②フードテックの新潮流——ゲノム編集から<食べるワクチン>まで ③土地を奪われる農民たち——食のマネーゲーム2・0 ④気候変動の語られない犯人——“悪魔化”された牛たち ⑤<デジタル農業計画>の裏——忍び寄る植民地的支配などが続きます。
テレビ番組には、このような情報提供の企画が見当たらず、何故か不気味に思われます。
私達が真実を知り、食を守るための選択「ツール」を提供することが膨大な取材活動に支えられた本書の目的と思われます。8ページにわたる「参考文献一覧」の提示にも、読者への大きな寄与を感じます。
人工肉や遺伝子組み換えサーモン、ゲノム編集魚を食べてどうなるのか?と食の未来に不安を感じますが、第6章「日本の食の未来を切り拓け——型破りな猛者たち」、第7章「世界はまだまだ養える——次なる食の文明へ」で報告される方々の取り組みには、敬意と共に励ましを感じます。
著者は`24年4月に「国民の違和感は9割正しい」(PHP新書) を上梓しています。
裏金問題、新NISAなどのお金と政府、SNS企業・マスコミ報道などに「何かがおかしい」と感じる違和感を紐解く労作です。
その第3章は農業についての記述です。「日本の農業政策の柱」の法律を`24年2月に四半世紀ぶりに改定した狙いが「グレートリセット」の一環では?と考えさせられます。
「令和の米騒動」の成り立ちを理解するための助けになります。
(小児科医 伊集院)