妊娠中の服薬のリスクとOTC類似薬(例会報告+追加)(NEWS No.603 p04)

9月22日、トランプ大統領は、妊婦が解熱鎮痛剤アセトアミノフェンを含む、商品名タイレノールを飲むことと、自閉症発症には関連があるので服用しないよう発表しました。幸い世界でも日本でも、メディアの多くはこの説は間違いだと報道をしたようです。また、同日にFDAが、アセトアミノフェンが自閉症やADHDのリスクを高める可能性があるが、この問題は現在科学的論争中だから長期の使用や微熱など不要な熱への使用はさけ、使用を最小限にすべきだとの、かなり慎重な内容で、医者向けに文章を出しています。ともかく、この発言で多くの人々が、妊婦が服薬する薬に関心を持たれたと思われます。

それでは、現在までの研究ではトランプ発言の真偽はどうでしょうか?

障害ありとする研究よりも、より多くの研究が自閉症などの障害の増加がないことを証明しているようです。この中で、アセトアミノフェンが自閉症などへの影響がないことをはっきりさせたのが2024年4月発表の、スエーデンの1995年から2019年までの240万人のデータ分析の報告でした。

この研究の解説記事によりますと、この研究は「兄弟姉妹(シブリング)比較」という方法を使っています。これは、遺伝的素因や多くの家庭環境を同じくする兄弟姉妹で、アセトアミノフェンを使った人と使わなかった人を比較しています。これにより、遺伝や家庭環境薬の影響を排除して薬の影響を評価できています。

結果は、単に薬の使用群と使用無し群の比較では使用群でADHDのリスクがハザード比で1.07(約7%増加)でしたが、兄弟姉妹で比較するとハザード比は0.98でリスクの差がないとの結果が出ています。他方で、この方法で喫煙の有無を分析するとハザード比は1.18で約18%の増加が認められています。大規模で方法も厳密なこのカロリンスカ研究所の分析は信頼できるようで、その他の研究と合わせて、現在ではアセトアミノフェンが、妊婦にも使える最も安全な解熱鎮痛剤になっています。

【OTC類似薬の「保険薬」はずしは危険】

目を日本に転じますと、自民・公明・維新によるOTC類似薬を医療保険では処方できなくするとの合意により、患者負担の大幅増と共に、副作用による危険性が高まろうとしています。

まず、これまでのように、これらの薬剤は保険では出せなくなりますから、薬局で買わざるを得なくなります。例えば、先の妊婦の解熱・鎮痛は何を使うかの問題ですが、アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛剤は非ステロイド性抗炎症剤NSAIDsになります。妊婦の場合、後者は使用に関して医師の指示が必要ですが、保険外をされますと、医師の指示なしで使うことが増える可能性があります。

NSAIDs以外のOTC類似薬も保険を外され、医師の監視から外れます。自民・公明・維新の合意で保険外しが強行されようとしているOTC類似薬は相当数ありますが、これらは一定の条件下でコンビニでも買えるように今年の5月14日に「改正」されています。これでは、ますます危険な薬剤の使用が増える可能性が高くなります。

【「維新」の提示したOTC類似薬】

今年維新が提示した保険を外しす薬剤の一覧がネットなどで紹介されていますので見てみます。

日本維新の会が提案する薬の保険除外リスト(4月17日時点) – 全国保険医団体連合会

この表では、内服薬や点眼・塗布薬などが混在していますので、投与方法で分けた表にしました。まず、内服薬は下表です。成分の効能別にまとめています。先の話題のアセトアミノフェンは載っていませんでした。

抗ヒスタミン剤が4種、NSAIDsが2種、その他が4種でした。内服薬の種類は少ないが、使用頻度がとても高いものです。

抗ヒスタミン剤は、日本人の2人に1人ともされる花粉症の第一選択薬です。さらに、蕁麻疹や、アトピー性皮膚炎のかゆみ止めとして頻用されています。また、ロキソプロフェンやイブプロフェンは、前者が日本では有名で、後者は世界的に代表的な、非ステロイド性抗炎症薬であり、抗炎症薬としての使用や、単なる解熱鎮痛剤として、頻用されています。さらに、酸化マグネシウムも便秘の最もポピュラーな薬ですので、これも消費量は莫大なものです。それらを保険から除外するとそれなりに保険医療の支出が減るのかも知れませんが、その分をはるかに超える患者負担増が生じます。

【保険でなくOTCだと製薬会社の利益が増大し、患者負担は10倍などに!】

しかし、他方で、薬価が大変安いことにも驚きませんか?フェキソフェナジンを花粉症で一日1回飲んで30日間続けても、10.4円×1×30=312円です。その他の薬も大きく変わりません。もちろん患者負担は、その0-3割程度です。他方で、「第2類医薬品」として、アマゾンの通販で売っているフェキソフェナジンでは最も安いのは日野薬品工業製で60錠915円(15.25円/錠)で、大昭製薬のフェキソフェナジン「RX」というのは、120錠3988円で、33.2円/錠でした。1.5-3倍強です。また、市販薬では12錠とか120錠とか箱単位で買わざるを得ないので大変高くなることが多くなります。「第2類医薬品」は、薬局やドラッグストア、インターネットなどで購入可で、薬剤師または登録販売者が情報提供や指導を行うことが「努力義務」とされています。販売時には、専門家(薬剤師、登録販売者)が情報提供し、相談があった場合は、専門家による指導を受けてから購入する必要があり。とされています。とはいえ、通販でも購買可で、薬剤の情報提供や指導は「努力義務」と大変甘いものになっています。

ですから、例えば購買者の鼻水が「風邪によるもの」か「アレルギーによるものか」にほぼ関係なく使用することになる可能性大です。

次に、ロキソプロフェンですが、これは、「第1類医薬品」になっていて、薬剤師が居ないと販売できないことになっていますが、同様に通販で簡単に買えるようです。(どんな方法で薬剤師から説明を受けるのかわかりませんでした。)アマゾンで「ロキソニンSプレミアムは、24錠1010円で42円/錠で薬価の4倍強、皇漢堂という会社の製品では12錠450円、37.5円/錠(税込み)だそうで薬価の3.7倍でした。これらも、箱詰め販売ですので、患者負担はもっと増えます。

いずれも、保険薬より数倍以上高く売れるため、製薬企業・ドラッグストア・通販企業は大きな利益を得る可能性があり、患者は自費となり、患者負担が大幅に増加します。

【医者への正確な副作用情報】

もう一つの問題は、日本の医者は妊娠中の薬の使用の危険性をどの程度知っているかのです。私は、昔は医薬品・治療研究会編訳「妊娠中の投薬とそのリスク」や「Thomas W. Hale. Medication and Mother’s Milk 2008 Hale Publishing」で調べてお母さんに伝えていました。

しかし、今や最新の情報をネットで得ることができます。この報告を書くにあたってオーストラリアのネットを調べたところ、最新のデータが見つかりました。「Australian categorisation system for prescribing medicines in pregnancy」で検索し探すとするとすぐ出てきます。薬の一覧表が出てきて、「Category」でAとかB3とかに分類されており、正確な情報がわかります。

解熱鎮痛剤に使われる薬としてよく知れていると思われるのが、「ロキソニン」や「イブ」でしょうか?「ロキソニン」は見つからず、「イブ」の成分「イブプロフェン」は「カテゴリーC:薬理作用により、奇形を引き起こすことなく、ヒトの胎児または新生児に有害な影響を引き起こした、または引き起こす疑いがある薬物。これらの影響は可逆的である可能性があります。詳細については、添付のテキストを参照してください。」となっており、しっかり勉強して処方しなければなりません。

このほか、イギリスのNational Health Serviceには妊婦が薬を相談するWebsiteの’Bumps’ があります。カナダもこの面で優れ、専用のサイトがありました。日本は、成育医療研究センターのサイトで見つかりました。しかし、このサイトは112例のイナビル使用者の結果だけで「胎児に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられます。」としています。このサイトがどれだけ信用できるかわかりませんが、海外のデータベースにはない薬を見ることができるので役に立つことはあるとは思います。

はやし小児科 林敬次

<「維新」案の、外用薬など>
これらにも危険なものがあるようです。ご検討ください。