薬のコラムNo.134:最もよく使われている抗リウマチ剤「リマチル」は効果が証明されていない!

1995年,私たちが喘息に対する経口抗アレルギー剤や抗痴呆薬を例として,全般的改善度という日本的薬剤評価基準を日本臨床薬理学会で批判し始めて2年目の頃です.北里大学の近藤啓文氏が,大変すばらしい報告を臨床薬理学会に出されました.

それまでの抗関節リウマチ薬の評価方法,特にどの程度効いたかという尺度=アウトカムがおかしいから,世界的なものに直すべきであるというものでした. しかも,彼は私たちの手法と同じように,全般的改善度など日本に特有な尺度では効いているかのようだが,世界的な尺度では効いていないことを明示していま す.(下表)

          薬剤         ブシラミン
        対照薬   プラセボ      ペニシラミン
<評価尺度>
全般改善度       < 0.01       < 0.05
Lansbury index   < 0.05       ns
疼痛関節数       ns           ns
腫脹関節数       < 0.1 (ns)   ns
疼痛点数         < 0.1 (ns)   ns
MSの持続         ns           ns
握力             < 0.05       ns

評価尺度中の全般的改善度というのは,医師が最初よりどれだけ良くなったかと決める,客観的基準が全くない尺度です.Lansbury indexというのは,1980年代より欧米では全く使われなくなった問題のある尺度です.

要は,世界的な尺度では効果が証明されていない,すなわち効果が証明されていないということになります.そこで,「わが国で行われた抗リウマチ薬の治験成績を再評価する必要がある.」と近藤氏が主張しているのです.

ところが,医学中央雑誌やMEDLINEを検索しても,その後このブシラミン (bucillamine) が再評価されたという論文はお目にかかれませんでした.そうです,いまだにその効果が証明されていないことになります.

ところがみなさん,このブシラミン製剤である商品名「リマチル」が,ある調査会社のデータでは病院勤務医も開業医も最もよく使っている抗リウマチ剤と なっているのです.これは,私たちが批判した経口抗アレルギー薬が当時の63%から10%台に減り,抗痴呆薬のほとんどが市場から姿を消したのと極めて対 照的です.私たちと違い,しつこく批判を続けなかったせいだと思われます.

(2003年8月)