感染性胃腸炎には経口補液が第一選択

冬の風邪でインフルエンザより怖いのが感染性胃腸炎です.特に乳幼児では吐き下しが続くと脱水症になりやすく,迅速で適切な対応が必要です.中等度の脱 水症ではソリタ顆粒など経口補液が静脈内点滴よりも優れているという研究が報告されており,流行時の外来,家庭での看護に参考になります.

研究のひとつは,今年のPediatrics(2005;115:295-301)に報告されたもので,2001年12月から2003年4月の間に救急 を受診した8ヶ月〜3歳の子ども73名を,経口補液(ORT)群に36名,経静脈点滴(IVF)群に37名を無作為化比較対照したものです.その結果,2 時間後,4時間後の脱水症の改善に有意な差はみられませんでした.一方,治療開始所要時間はORTの19.9分に対しIVFでは 41.2分と有意(差21.2分;95%CI:-10.3 to -32.1)に開始時間に差がありました.治療後に入院を必要とした割合は,ORTでは30.6%でしたが,IVFでは48.7%(差 -18.1%;95%CI:-40.1% to 4.0%)で,経静脈点滴が優れているわけではありませんでした.

もう一つは14文献のメタアナリシス(BMC Medicine 2004;2)で,治療失敗に有意な差はみられません(リスク差 RD 3%;95%CI:0 to 6)でした.死亡報告のある4研究によると,IVFでは6例,ORTでは2例でした.6時間,24時間での水分補給量,体重増加,下痢の持続,ナトリウム 異常に差はなく,滞在時間はORT群で有意に短かった(-1.2日;95%CI:-2.4 to -0.02).IVFでは静脈炎の発生(NNT 33;95%CI:25 to 100)が,ORTでは麻痺性イレウス(NNT 33;95%CI:20 to 100)の発生が多くみられました.これらの結果からORTとIVFは,吐き続ける小児には一般化できないようですが,有効性,安全性に差は見られ ず,ORTを第一選択と推奨する実用的ガイドラインを支持するもの,としています.

WHO,米国小児科学会とも,中等度の脱水症には経口補液を第1選択に推奨しており,患児の負担を考えれば日常診療に積極的に取り入れるべきでありましょう.

(2005年11月)