本「シリーズ 障害者の自立と地域生活支援 」障害者生活支援システム研究会 編 かもがわ出版

シリーズ 障害者の自立と地域生活支援
8「障害者自立支援法と応益負担」
9「障害者自立支援法活用の手引き」

このブックレットのシリーズは,大阪障害者センターの方々によって運営されている研究会が編集しています。詳しくは,http://www.npo-osc.com/
をご参照ください。80-100ページ程度のブックレットですので,すぐに読めると思いますが,目次などを紹介しておきます。

8「障害者自立支援法と応益負担」
障害者自立支援法が示す利用者負担
障害者・家族のくらしは負担に耐えられるのか
否定されてきた「権利としての社会保障」
グランドデザイン案等の法的問題点
介護保険制度で起きている問題,起きつつある問題
差別の固定化
保険料は早めに,給付は控えめに
格差は「自己責任」?
低所得者層の介護サービス利用の自己抑制を生んだ介護保険制度の利用時1割負担

シリーズ8では,2章で障害者家族がどのような負担を抱えているのかが具体的に語られているのが印象的です。たとえば強度行動障害などの場合,「社会生 活上のルールが守れない人たちへの対応は,生命を守り,世間に迷惑をかけないよう,絶えず大声やパニックを回避するため,事前にパターン化を許容するか, 食べ物を与えるなどの対応を通じて…。」「主たる介護者が就労することはほぼ不可能で,結局,父親等の経済的収入に依拠せざるを得ません。しかし,他に迷 惑をかけないためやパニック防止に必要な対応として,例えばタクシー利用,通院経費,有償ボランティアの費用などの特別な経費負担に加え,こだわりやパ ニックのための施錠,器物破損による買い換え経費,特殊設備の設置費用などのほか,水にこだわりをもつ子の場合の水道料金の増大,外食費,ビデオ借入料な ど,一般では考えられない経費の増加が家計の圧迫を促進しています。」この辺りは読んでいてハッとさせられました。障害者を支えている家族の生活状況をつ ぶさに調査し,それに基づいて応益負担の誤りを主張している所をお読み下さい。

9「障害者自立支援法活用の手引き」
こちらは自立支援法の内容を具体的に解説しているもので,新しい制度の下でも何とか負担を少なくするための取り組みを紹介しています。制度的にはとても 複雑になるので,うっかりしていると生活保護世帯の水準を下回る生活を強いられるという危機感から執筆されています。各自治体の対応については未だ決定さ れていない部分が多くあり,また煩雑な請求事務が爆発的に増えることが予想されています。おそらく各自治体の窓口でもパニックとなるでしょう。このような 事態を引き起こしたのは誰なのか,どうすれば改善して行けるのか,自治体職場に働く人々との連携も含めて,これからの反撃が問われています。みなさんご一 読を。

(2006年3月)