改めて示された喘息治療薬−セレベント(サルメテロ−ル)の危険性

本誌1月号で,長時間作動型吸入β刺激薬であるサルメテロール(商品名セレベント・グラクソ・スミスクライン(GSK)社製)の使用時に喘息関連死が多 発する問題を紹介した。具体的には25,858名に関するデ−タ−が検討され,サルメテロ−ル投与群では,呼吸器関連死と生命を脅かすエピソ−ドは1.4 倍,喘息関連死は4.3倍高くなるという報告である。これを受けて,米国FDAは,黒枠警告を発し,サルメテロールを第一選択薬でなく二次的使用に限定す るよう指示している。

その後,米国内科雑誌(Annals of Internal Medicine. 2006年6月20日号,144巻:904-912)に,長時間作用型β作動剤(LABA),たとえばサルメテロール(セレベント),ホルモテロール(ア トック)が,喘息増悪に伴う入院,生命を脅かすような増悪,喘息関連の死亡を増加させたとの,メタ分析論文が掲載された。このメタ分析は,長時間作用型β 作動剤による重篤な,生命を脅かすような,致死的な喘息悪化を増加させる危険を評価することを目的とし,33,826の喘息患者とプラシーボを対照とした 19のランダム化比較試験を解析したものである。集積結果によると,長時間作用型β作動剤は,入院治療を要する重篤な喘息悪化で2.6倍,生命を脅かすよ うな喘息悪化で1.8倍,喘息関連死亡で3.5倍に増加させていた。入院はサルメテロール(セレベント)とホルモテロール(アトック)で有意に増加し,小 児および成人においても同様に増加した。

また,著者によると,長時間作用型β作動剤による喘息関連死亡の増加は,米国で毎年発生する喘息関連死亡5000例中の4000例(80%)の原因であ ると考えられると推定している。さらに,FDAによる黒枠警告が追加されたにも関わらず医師の処方習慣は変化しておらず,「薬剤が市場の販売を取り消しさ れる必要性の検討」にも言及している。

またしても,長時間作動型吸入β刺激薬の喘息治療上配慮すべき危険性が明らかになったと言える。

(2006年9月)