4月リハビリテーション保険修正は理念上の勝利,具体的改善の運動を

昨年4月にリハビリテーションが大幅に改悪されました。その主な内容は,リハビリの病態により中枢神経,運動機能(整形的疾患の大部分),呼吸,心臓な どに分け,それぞれの病態で実施できる限度日数の上限が設定されたことでした。例えば中枢では180日,運動150日です。このために多くの患者さんが路 頭に迷いました。たとえば,Yさんはリハが打ち切られたため寝たきりになり,うつ状態になりました。この方は,たまたま宅老所の手厚い介護・看護でずいぶ ん改善されたのですが,それがなかったら絶望的な状態になっていたでしょう。この医療改悪の思想は,「改善」する人は医療費を出すが,改善しない人へは出 さないというものでした。

強い批判があり,患者・市民団体やリハビリ関連学会・職能団体が改善署名に取り組み,あっという間に数十万人分が集まりました。私の職場でも呼びかけましたところ,宣伝が不十分だったのにもかかわらず300人以上が短期間で集まりました。
その結果が今年4月の医療保険点数見直しです。制限が緩和され?「維持療法」が認められました。これは理念上,確かに改善なのですが,実際はむしろ改悪とも言える内容でした。

<上限がさらに短くなった>
今までは脳血管障害の場合180日まで一回250点だったものが,141日目からは210点に2割近く値下げされたことです。同様に運動器疾患では上限 が150日までで,121日目以降はこれまでの180点が150点に値下げされたのです。多くの医療機関ではこれではやっていけないので,長い患者は避け るようになります。実質的に上限が140日(運動121日)に引き下げられるとも考えられます。

<「維持」を認めた代わり,料金を下げる>
「維持」という形で,症状が改善しなくても多少はリハを認めたことは評価できます。しかし,月1回から3回リハをすれば月440点(普通は1点=10 円,リハビリテーション医学管理料Ⅰの場合,以下も同じ),4回以上しても良いですが月880点しか払いませんよ,というものです。運動器疾患ではそれぞ れ月340点と,680点になりました。月4回以上して欲しい患者さんもいますが,それだと医療機関側では大幅な減収になります。
また,それをむりやり1-2回ないし4回にしてくれというのは医療機関ですから,責任が転嫁されたことになります。今までは1回250点(運動器では 180点)だったものが,月4回実施して880点ですから1回220点(運動器では170点)に値下げになったともいえます。

その他,介護保険でリハをすると,医療保険でのリハができなくなったなども,大変な改悪です。先の運動は障害者切り捨ての理念を打ち破りましたが,今後はこれらの問題を改善しなければなりません。

(2007年5月)