未だに効果が証明されない「オノン」

オノンは世界に先駆けて抗ロイコトリエン剤として売り出され,日本では長年,唯一の抗ロイコトリエン剤として喘息・アレルギー性鼻炎に使用されてきまし た。私たちが,抗喘息薬の6割以上を占めていた「経口抗アレルギー剤」を批判していた頃には,まだ少ないシェアーでしたが,その後ほとんどの「経口抗アレ ルギー剤」が衰退する中で,最もよく使われてきたと思われます。しかし,同じ抗ロイコトリエン剤のモンテルカストとザフィルカストが世界的に売り出される 中で,オノンの独占的な地位は揺らいでいます。

さて,喘息治療薬の中での抗ロイコトリエン剤全体の位置は,世界的なガイドラインのGINA最新版(2006年)では,軽症持続性喘鳴成人での吸入ステ ロイド剤の代用薬,吸入ステロイドの追加療法として効果があるが長期間作用性吸入β2刺激剤に及ばない,となっています。しかし,少し前に高松勇氏が書い ているように,長期間作用性吸入β2刺激剤には副作用の問題があります。ともかく,喘息発作予防薬としては,まず吸入ステロイドであることは確かであり, まずオノンという日本での使われ方とは,まるきり違います。
ところで,世界的に使用されているロイコトリエン拮抗剤は,モンテルカストとザフィルカストであり,オノンは日本(?)だけのようです。最も早く商品化し日本で膨大な人に使用されたオノンが,どうして欧米で使用されないのかは私には不思議です。
8年前に,多数の「経口抗アレルギー剤」の臨床治験論文を分析して「呼吸」という雑誌に載った時に,この薬の成人喘息に対する臨床試験を検討しました。 その時の評価としては,主な評価項目が非科学的な「全般改善度」でした。呼吸検査の実施率は研究対象者のわずか61.6%に過ぎず,この試験では喘息の基 本的な呼吸機能評価であるピークフローもしていなかったので信頼できませんでした。

「慢性喘息に対する吸入ステロイドに抗ロイコトリエン剤の追加使用の評価」というコクランのシステマティックレビューがあります。これには Tamaokiらの論文が紹介され,呼吸検査であるFEV1の改善はプラセボとの間に有意差なし,朝のピークフローは有意差あり,症状は有意差あり,β2 刺激剤の使用で有意差あり,ステロイドの減量で有意差なし,などとなっています。一部効果があることになっているのですが,その使用量は450mgを一日 2回で,認可量の2倍です。普通量での効果は不明なのです。私は,このコクランレビューの準備過程で,日本語文献を一つ英語訳したため,謝辞に名前を載せ てもらっているのですが,未だにこの薬がどれだけ効果があるか自信がないところです。

以上のような臨床試験の問題点が,オノンが世界的に使われない理由になっているのかも知れません。それとも他に何か問題が? ご存じの方は是非教えてください。

(2007年11月)