薬のコラムNo.144:喘息に抗ヒスタミン剤(経口抗アレルギー剤)ケトチフェンは有効か?

医問研では日本の喘息の治療に経口抗アレルギー剤と称して抗ヒスタミン剤が多用されていることを批判してきましたが,2003年にコクラン・ライブラリ に「喘息と喘鳴の患児の長期管理におけるケトチフェン(ザジテンなど)単独あるいは併用使用」と題するシステマティック・レビューが出ていますので,これ を紹介します.

分析対象となった子ども達は?
4ヵ月から18歳(1つは25歳)までの幅広い層にまたがっています.前書きにある「幼年層(訳注:特に学童期以前を指す)に吸入治療を導入することは 比較的困難なので,ケトチフェンなど経口薬は有用である可能性がある.」としていることと,若干食い違っています.また明らかな喘息患児以外に「8週間に 2回以上の喘鳴」という様な患児も含まれています.
27の研究がこのレビューに包含されましたが,喘息は軽症から中等症で,12研究はアトピーを合併するかどうか報告していました.
研究の質は?
26研究はランダム化二重目隠し試験でしたが,25研究でランダム化方法の遮蔽や目隠しの方法について適切な記載がされていませんでした.多くが1990年以前の研究だったことがその一つの理由です.脱落や分析からの除外について記載されていたのは22研究でした.
分析結果(アウトカム)は?
研究毎に採用している指標が大きく異なっていたため,データの統合(メタアナリシス)は困難でした.それでも(A)併用気管支拡張剤使用回数の減少につ いて4つの研究を統合すると,ケトチフェン群はプラセボ群の2.39倍(95%信頼区間1.64-3.48)多く減量できていました.また別の5研究で (B)気管支拡張剤の使用頻度を比較するとケトチフェン群は0.61倍(0.41-0.92)の使用頻度でした.また他の4研究によると(C)症状点数も ケトチフェン群で-0.49(-0.82から-0.16)と有意に減少していました.(D)喘息の悪化について報告した2研究によると,ケトチフェン群は 0.31倍(0.16-0.59)の悪化で有効となっていました.
どこに注意すべきか?
ではケトチフェンは有効と結論して良いのでしょうか?その前にいくつか解決すべき問題点があげられます.
(1)学童期以前での効果が認められていない.:吸入療法が難しい学童期以前の群に着目すると,(A)から(C)の指標について効果に有意差は認められないのです.これは前書きにある目的と反します.
(2)目隠しの質の悪いもので大きな有意差がある.:ケトチフェンは服用で眠気が生じますので,服用した心理的効果で結果に歪みを生じる危険性がありま す.また(D)の指標についてはアトピー患児の割合が極めて高く,鼻症状や湿疹が高頻度にみられたことに注意が必要で,これが結果に歪みを与えている危険 性があります.
(3)肺機能検査や喘息の発作回数,気管支拡張剤の使用量などで効果が確認されていない.:単に使用回数が減ったという報告だけでなく,より信頼性の高い指標で効果が再確認されるべきです.
今後より詳細な検討が必要ですが,学童期以前の小児については,特に効果が疑わしいことに注意を喚起しておきたいと思います.