インフルエンザ関連脳症とワクチン

インフルエンザ関連脳症とワクチン−学会の非科学性の暴露

インフルエンザ関連脳症は,ワクチン接種拡大に利用された。「ワクチンを打っていれば脳症にはならなかったのに」という患児の親御さんへのことば,学会 での症例報告に必ずついて回った「ワクチン既往なし」という一行など。「脳症の予防に,インフルエンザワクチンが有効かどうかはデータはないが…ウイルス 血症が発症に関与しているとすれば,有効と考えるのが妥当である。(99.12月小児科学会Hpより)」。一方,我々は早期からNSAIDsの危険性を指 摘,中止を要請してきた。事の重大性のため,学会は同声明の中で「脳症を悪化させる因子の一つ」としてNSAIDsの中止を勧告したが。

インフ関連脳症は,98年度の研究班の調査から3年間減り続けたが(217,109,63名),調査対象を拡大したため2001年増加,その後再び減少 し(230,160,123名),2004年度には36名,小児はそのうち30名となった(2004年度はネット情報)。この脳症の減少はNSAIDs中 止の徹底によると思われるが,ワクチン接種の増加の結果とも類推される。ところが,ワクチン接種率が上昇するにつれ,脳症症例のなかにワクチン接種例が増 え,脳症症例のワクチン接種率は一般の接種率と同じと推定されることが明らかになった。2003年度の研究班報告書では,責任者である森島氏が「脳症症例 のワクチン接種率が6.5%,一般の接種率が11%と差は認められなかった」と触れる程度であった。商業雑誌に発表された症例対照研究を見ると,実は ITT分析の結果は脳症発症群の接種14%,対照群の接種10%と,脳症群のほうがワクチン接種が多かったという結果だった(かろうじて有意差なし)。

こういった背景の中,日本小児科学会は,脳症とワクチンの関係について論理のすり替えを謀ってきた。「インフルエンザ脳症の阻止という点でのインフルエ ンザワクチンの有効性は低いと考えられる。しかし,インフルエンザ脳症はインフルエンザ罹患者に発症する疾患であるところから,インフルエンザ罹患の可能 性を減じ,その結果として脳症発症の可能性のリスクを減じる可能性はあり,ワクチン接種の意義はあるものと考えられる。(H16年10月同Hp)」という 内容である。例えばワクチン接種で罹患が50%減れば脳症発症も50%減るだろうという論理である。実際のデータからは脳症発症者中のワクチン接種率は母 集団と変わらないため,学会の論理が成り立つためには,ワクチン接種者の脳症発症率は2倍という事になってしまう。

結論は明らかである。脳症をワクチンで予防することはできなかった。サイトカインの制御ができなくなって脳症が主として1日以内に発症するというメカニ ズムを考えても,これはしごく当然である。学会は,全く科学的根拠なしに脳症をワクチン拡大に利用し,間違いを認めるどころか再び根拠なしのすり替え論議 でごまかそうとしている。メカニズムからタミフルが脳症に効かないことは類推されるが,ワクチンのごまかしが明らかになるにつれ,今度はタミフルが脳症激 減に効いたとでも吹き始めるのだろうか?

耳鼻科や歯科領域でNSAIDsはまだまだ解熱剤として使われていると推定される。他学会も含めてNSAIDs禁止の徹底を呼びかけることこそ専門家集団としての日本小児科学会の役割ではないだろうか。