ヒブワクチンについて

2008年12月下旬ヒブワクチンが発売されます。今回はこのヒブワクチンについて考えてみます。
インフルエンザ桿菌,別名ヘモフィルスインフルエンザは細菌の一種です。喉によくいる細菌で日本の幼児の20-40%に常在しているといわれます。中耳 炎や扁桃腺炎,喉頭蓋炎,肺炎や髄膜炎を起こす場合があり,特にB型菌(略してヒブ)は毒性が強く,インフルエンザ菌髄膜炎の95%くらいはこのヒブで起 こります。小児の数%にはこのヒブが喉に常在しているようです。日本の調査では毎年小児の500-600名がHib髄膜炎にかかり,小児の細菌性髄膜炎全 体からみると,50-60%がヒブによるもので,死亡率は5%,20%位に後遺症があります。
1980年代後半からアメリカ,ヨーロッパでワクチンが小児に接種されるようになりヒブ髄膜炎は激減しました。日本ではヒブ疾患に対するデータが不足し ていたことと,ワクチンの効果に対する疑問,安全性に対する懸念があったため導入が遅れました。あるいは国産ヒブワクチンの開発を優先させたために必要性 の宣伝を政府サイドでしなかった事が原因かも知れません。
ヒブワクチンが欧米に導入された時期は日本ではインフルエンザワクチンの中止,MMRの被害などいくつかの予防接種被害が注目された時期でした。そのた め,ヒブワクチンの日本導入にはハードルが高く,厚生省は全国でのヒブ実態調査をせざるを得ない状況でした。そのためか,ヒブ感染については,日本でしっ かりしたデータが集められました。
小児科にとって,細菌性髄膜炎は最も怖い病気のひとつですから,ヒブワクチンは必要性の高いワクチンの一つです。
今回,日本で導入されるワクチンはヨーロッパを中心に出回っているワクチンです。効果を高めるため破傷風ワクチンと一緒に接種します。コクラン研究によ るとヒブワクチンはヒブ髄膜炎の罹患を80%減らすとされます。実際にアメリカやヨーロッパではヒブ髄膜炎患児は99%減っています。
安全性について国内の研究は貧弱ですがヨーロッパと同じワクチンを,同じ用法で使うため,ヨーロッパのデータが利用できます。実際コクラン研究やアメリ カの発表などからは安全性が高いとされています。発熱物質であるエンドトキシンの含量,牛由来成分の混入などに疑問は残りますが,安全性は高いようです。 今後の安全性調査は重点的に続ける必要があります。
今回の発売は少量で,自費です。今後希望者には保険/無料で接種する方策をすべきと思います。同時に接種者全員の副反応調査を実施すべきでしょう。

2008.12 Y