大阪府の医療費助成削減反対(2009年2月)

大阪府の医療費助成削減反対

現在クリニックで「大阪府の医療費助成制度削減に反対する署名」を来院される患者さんのご家族にお願いしています。来院される患者さんが,「よりよい医 療をわが子に」との思いを込めてして下さっています。忙しい診察中ですので,直接このことだけをお願いする機会は中々取れないので,掲示板に趣旨を貼り出 して,受付カウンタ−に置いています。それだけなのですが,心ある患者さんご家族が,「子どもたちに良い医療を受けさせてあげたい」との強い願いが伝わっ て来ます。昨年10月に大阪市阿倍野区に開業をして未だ日が浅く,慣れないことも多い日々の中で初めてクリニックで行った署名活動でしたが,患者ご家族が 一筆一筆に込めて頂いた思いの重さを感じさせ,僕を励ましてくれています。
この署名が多くの方に共感を持ってしていただけている背景を考えてみました。今回の患者への負担増加が,現在深刻になりつつある社会での貧困の拡がりの 中で,多くの子どもたちに取り返しの付かない受診の遅れ,疾病の重症化をもたらすことになりえる危険性を持っており,そのことへの強い懸念が存在している こと。すなわち,現在,国保料を払えない滞納世帯が約453万世帯と,加入者世帯の20.9%に及び,また,国保の保険証を取り上げられ資格証明書を発行 された世帯は約34万世帯,短期保険証発行は約124万世帯で,実に全世帯の7.3%が正規の保険証を取り上げられている現状があります(厚労省1/16 発表の国保の2007年財政状況(速報値)による)。
さらに,厚労省は「昨年10月から今年3月までに失職する非正規労働者は全国で85,000人を上回るとの見通し」と述べていますが,この見通しは,雇 用悪化の序盤戦でしかなく,「正規・非正規を合わせ,昨年12月から今年11月までに270万人もの雇用が失われる可能性がある」(大和総研1/9レポ− ト)と言われるように凄まじい生活状況の悪化が今後予想されています。大阪府が実施されようとしている乳幼児医療助成の削減は,このような府民生活の悪化 をさらに助長させ,子どもたちの健康と生命に大きなマイナスの影響を与えるものと考えられます。
また,今回の乳幼児医療費助成の削減は,「早期受診にて軽症のうちに疾病を治療する」という永年大阪で築いてきた小児医療の成果を後退させるものであ り,受診の遅れ,重症化から,結果として社会的には医療費の増額をもたらす懸念があります。また,かかりつけ医への日常の受診の敷居を高くさせることに よって,患者家族の疾病時の不安は増加する側に移行し,時間外受診を増加させ,それでなくても疲弊してきている小児救急の現状を悪化させることに繋がる懸 念もあります。
さらに,乳幼児医療費助成は,東京都特別23区での中学生までの通院医療費の無料化や,東京都下の中学生まで通院費1回200円に負担の軽減等,全国的に広がってきていますが,大阪府の施策はこの乳幼児医療助成拡充の流れに逆行するものです。
反対署名を集めて,橋下知事に対して「大阪府の医療費助成制度削減に反対する」意志を明確に示していきたいと考えています。

2009.2 T