鳥インフルエンザワクチンを人間に —この恐ろしい計画—

「世界に先駆けて」日本で,鳥インフルエンザを1千万人に接種する計画があります。4月6日の「専門家会議」の方針では,まず6千人の臨床実験をするそうです 1)。4月25日にこのワクチンの開発・備蓄を促進する法律まで成立しました。

<新しいインフルエンザウイルスが人間で流行する可能性はほぼない>
長い人間の歴史でたった6種のインフルエンザしか人で流行していません。新しいインフルエンザが人間に出現する可能性はとんでもなく低いのです 2)。

<鳥インフルエンザは人間では流行しない>
もし鳥インフルエンザにかかっても,普通の健康状態の人間ならほとんど症状もでません。WHOによれば,世界中で2008年までの5年間の死亡者は240人で,ほとんどはインドネシア(107人),ベトナム(52人)などいわゆる発展途上国だけです。
しかも,鳥インフルエンザは人間の間では流行しません。明確な人から人への伝染はないのです。だから,現在の鳥インフルエンザに対するワクチンは意味がありません。

<現存しないウイルスのワクチンは作れない>
また,たとえ鳥インフルエンザに近いものが流行するにしても,今はどんな型が流行するかは全く分かっていません。パンデミックをおこすインフルエンザウイルスは現存しない,「幻のウイルス」なのです。そんなウイルスのワクチンは作ることはできません。

<「基礎免疫」を作るという詭弁>
以上のことは「専門家」はみんな分かっているため,幻のインフルエンザウイルスに対する「基礎免疫」をつけるためだと言っています 1)。そんなものが流行を阻止し,症状をやわらげることができないことは,人間のワクチンで証明されています。インフルエンザワクチンを1回して「基礎免 疫」がついているはずなのに,その人達に毎年流行株を予測したワクチンを打つのはどうしてでしょう?流行の型とワクチンが合致していてもほとんど効果を証 明できないでいる程度 2)なのに,まるきり型が違うワクチンの効果は絶望的なのです。

<未知のウイルスへの効果を確認する手段はない>
最近まで,鳥インフルエンザのワクチンは人間に抗体を作れなかったので 4),6千人の実験は抗体を作ることができたら「効く」と発表されると思われます。しかし,それは単に鳥インフルエンザに対する抗体ができただけの話で, 病気の発生阻止や症状軽減という本来の効果を示したのではありません。

<鳥インフルエンザワクチンは危険性が高い>
研究の推移からすると,今回実験される鳥インフルエンザワクチンは,「全粒子」ワクチンと思われます 4)。これはウイルス粒子のほんの一部を使った現行の人インフルエンザワクチンと違い,副作用が多いために使われなくなったものです。6千人にも実験する のさえ実に危険です。

<人間にする前に,できるなら鳥のインフルエンザを一掃すべき>
そもそも,鳥インフルエンザですから,まず鳥のインフルエンザをワクチンで一掃できることを証明すべきです。鳥インフルエンザワクチンは効果がよくな く,問題点も多いため,メキシコなど一部の国を除き,日本も含めてほとんどの国で鳥に使用されていないのです 5)。鳥にさえ使わないワクチンを「廃棄するよりよい」 1)と言って人間に使うのです。メキシコでは,不活化ワクチンと生ワクチンを使用したあとインフルエンザウイルスの変異が見られた 6)ため弱毒株が強毒株になる可能性があるとして,鳥へのワクチンの使用は慎重になっているのです。

<蛇足ですが,人間のインフルエンザワクチンは効果がなし>
人間のインフルエンザワクチンでは,流行阻止効果も,症状を軽減する効果も,あったとしてもごくわずかであり,国民全員にする根拠はない,とこれまでのインフルエンザワクチンの効果のシステマティックレビューはすべて証明しています。

(H)

文献
1)毎日新聞2008年4月17日
2)浜六郎:やっぱり危ないタミフル.週刊金曜日
3)Cochrane Library 2008 Issue2
4)小田切孝人,日本臨床 2006;64:1855-64
5)動物衛生研究所ホームページ
6)LeeCW et al. J Virol. 2004;78:8372-81