医学論文を読む:食品添加物と多動の関連性

食品添加物が子どもの多動や学習に影響するということは30年以上前から言われていたようです。1992年発行の本にも,イギリス最大の小児病院で76 名の多動の子どもに食事療法をして81%の子どもたちに効果が上がり,合成着色料と保存剤が最も強く影響していたので,「ハイパーアクティブの子どもたち を守る会」は食用黄色4号,2号,5号,赤色2号,3号など16種の着色料,4種の合成保存料,2種の酸化防止剤,味の素など3種の調味料を,絶対摂取し ないよう呼びかけていました(郡司和夫,赤ちゃんがあぶない,情報センター出版局1992.5.22)。
今回ご紹介するのは,二重目隠し(本人も評価する人も添加物を取っているかどうかわからない)ランダム化比較試験で,添加物が多動の一つの原因であることを証明した実験結果です。
この実験は,「正常な」3才16人と8-9才14人の参加者全員が平等に,
A)少し多めの添加物の混合物,
B)日常的に平均的に摂取されている添加物群,

P)偽の添加物(添加物が入っていない)
を,時期をおいて摂取するよう計画されています。しかも子どもを平等(ランダム)に3群に分けています。この方法はクロスオーバー法と言い,少ない人数で 検討する場合に使われる方法ですが,今回は参加者に平等にして「うちの子どもだけが添加物を使われるのはかなわない」と思われることを避けられるようにし ていると思いました。

患者群 添加物の摂取順
a群 P→A→P→B→P→P
b群 P→B→P→P→P→A
c群 P→P→P→A→P→B

実験は,上表の様に,1週間の基準的な食事後,偽の添加物から開始し,a群の子どもは1週間毎にAの食事から始めてP,B,P,Pの食事を順に食べま す。b群,c群もそれぞれ,始まる薬が違いますが,順に同じものを食べます。Pを間に挟んでいるのは,この間にその前に食べた添加物を身体から洗い流すた めです。
これらの添加物を摂取している間に評価をしています。評価方法は,行動の観察による「z-scores」と,教員と親による等級付け,(加えて,8,9才は注意力のコンピュータによるテスト)に基づいた全般的多動総計で評価しています。
AとPの間には有意差がありました。この差は,多動の診断基準に合った子と,そうでない子の差の10%程度になりました。わずか1週間の摂取で「多動」 の子どもの症状に1割近づいたことを意味しています。BとPの間には有意差がないが,もう少し人数を増やせば有意差が出そうでした。
これまでは,多動のこどもが食品添加物を摂ると多動が増えることがいくつかの研究で証明されていました。今回の研究は多動でない子でも添加物で多動になってゆく可能性を示したものです。

(H)

文献 Lancet 2007;370:1560-7.