医療トピックス(NEWS No.450 p05)

近畿小児科学会で、低線量放射線被曝-医療被曝の危険性を問う

本年3月24日に第26回近畿小児科学会が大阪国際会議場で開催されますが、医問研の仲間が低線量放射線被曝、とりわけ医療被曝の危険性を問う一般演題を4題出しています。

福島第一原子力発電所の事故による放射線被曝による健康被害に関して、現在の日本では、100mSvが放射線の発がん影響の閾値で、100mSv以下の被ばく量では、放射線被ばくによる人体影響がないかのごとき議論がなされています。しかし、実際には、100mSv以下の被ばくレベルで、半世紀以上前から数多くのがんの多発の実証研究が行われて論文として示されています。そして、最も大規模に放射線被曝が生じ、データ収集が行われているのが、診断や治療に用いる医療被曝の分野の患者のデータです。これは被ばく量の測定もきわめて正確です。そして現在の福島県等の議論から全く排除されているデータでもあります。

わが国の医療被曝は世界で突出して高く、診断用放射線による発がんリスクは世界一と言われています。Berringtonらは日本のがんの3.2%は診断被曝が原因で、発がんは年間7587名に及び、がん寄与度は英国の5倍であると推計しています(Lancet 2004; 363)。わが国の医療被曝線量が多い原因はCT検査時の被曝であり、CT装置の設置台数は1993年の約8000台(世界の1/3以上)から2003年には約14000台と倍増しており、国民総被曝線量の増加が懸念されています。さらに小児のCT被曝リスクは高く、乳児の1回の腹部CTで発がん死亡は1万人当たり23人と推定されています(AJR 2001;176)。国民被曝線量を下げるためには、CT検査適応の厳密化、ならびに被曝低減対策が重要です。

その1--低線量医療被曝の危険性を考える(高松)、

その2--診療放射線でのエビデンス(入江)では、上記の件を訴えていきます。

その3-胎児への障害(発がん・催奇性以外)(林)では、医療被曝による胎児への発がんと奇形以外の影響を医学論文レビューによって検討し報告します。結果は、いずれも、100mSvよりもはるかに低い被曝でも障害が生じていました。日本小児科学会は、150mSv以下は障害性がないとする見解を撤回し、患者や小児科医を含む医療従事者の被曝を可能な限り軽減する努力をすべきであることを訴えます。

その4-福島避難者こども健康相談会を取り組んで(伊集院)では、原発事故により関西地方に避難した子ども達を対象に2012年4月と9月に健康相談会の取り組みを報告します。相談内容は、体調不良に関するもの、健康不安や避難生活に関する事柄など多岐に亘り、医療機関受診・甲状腺検査への強い希望も確認されています。多様な子どもの症状が存在し、多くの親の健康不安の言葉を謙虚に受け止め寄り添うことが求められ、それに応える医療体制を求めていきます。大阪以外の地域での健康相談会の開催も訴えていきます。

貴重な機会です、ご参加ください。