くすりのコラム No.234 新規抗凝固薬リバーロキサバン(イグザレルト)からワーファリンへの切替に伴うリスクについて(NEWS No.451 p07)

新規抗凝固薬リバーロキサバンは、ダビガトランと並んで、血中INRの測定が不要な「便利な薬」と宣伝され、日本循環器学会は2011年8月、これらの薬を推奨する緊急ステートメントを発表し、近く診療ガイドラインの改訂も行われるとみられます。
ところが、リバーロキサバンのワルファリンに対する非劣性試験であるROCKET-AF試験のデータを検討すると、リバーロキサバンからワルファリンへの切り替えをした患者に、脳卒中などの重篤な有害事象が多数発生していることがわかった。市販後の副作用報告においては、リバーロキサバン服用中の有害事象についてしか報告されておらず、リバーロキサバン服用中になんらかの問題があってワルファリンへの変更を行った際に起きる有害事象については報告されていない。

このため、リバーロキサバンからワルファリンへの変更が重大な危険性を持っていることについてより広く注意喚起をする必要があると考えられる。

リバーロキサバン(イグザレルト)

海外販売名: Xarelto

  • 第Ⅹa因子を阻害薬
  • 効果測定方法がない
  • 出血時の阻害薬がない

ROKET-AF試験

  • 容量調節(2-3)ワルファリンに対する非劣勢試験
  • 45カ国1170以上の施設、14264人対象
  • 非弁膜症性心房細動患者、虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作、非中枢神経系塞栓症いずれかまたはCHADS2スコア2以上など
  • 主要エンドポイント「脳卒中または非中枢神経系塞栓症のいずれか」

承認審査報告書で指摘された問題点(p96)
ROCKET-AF試験においては最終投与後2日以内を評価の対象としているが、さらにそれ以降の3日目から30日目までのイベント発生数および発生率は、以下のとおりとなっている。
・試験終了後、リバーロキサバンからワルファリンへ変更した群(R→W群)
国内第Ⅲ相試験   11例(588例中)発生率1.87%
国外第Ⅲ相試験   22例(母数不明)
・試験終了後ワルファリンが再度投与された群(W→W群)
国内第Ⅲ相試験   4例(592例中)発生率0.68%
国外第Ⅲ相試験   6例(母数不明)
以上のような結果から、リバーロキサバンからワルファリンへの切り替え時には、脳卒中のような重篤な有害事象が増加することが示唆されている。有意差があるかどうか、またその作用機序は不明だが、切り替え時には、より注意深い観察が必要であると考えられる。

ワルファリンからリバーロキサバンへの変更時には、開始時のINR測定が可能なため抗凝固能を推測できるが、逆の変更時には、INR測定が意味を持たないため、患者の抗凝固能を適切に評価できない。

(薬剤師 小林)