くすりのコラム No.238 「インクレチン関連薬の発がん性リスクの懸念」(NEWS No.457 p08)

糖尿病薬としてインクレチン関連薬の処方が増えてきた。
糖尿病薬でがん原性試験が添付文書に明記されているのはインクレチン関連薬とピオグリタゾンだけである。海外ではすでにインクレチン関連薬は集団訴訟の対象となっている。またGLP-1受容体作動薬投与による急性膵炎リスクの増加を示唆した試験結果を受けFDAとEMAがその検証を行ったという。
詳細はDebora Cohen氏のBMJ記事「Has pancreatic damage from glucagon suppressing diabetes drugs been underplayed?」BMJ2013;346:f3680にまとめられていた。
インクレチン関連薬でがん原性試験でリスク増加のあったものを添付文書から抜き出してみた。
2-3年の寿命しかないラット、マウスの実験でこのような結果である。
本当のガン原性試験はこれからヒトで行われることになる。

GLP-1受容体作動薬

●エキセナチド:バイエッタ(日本イーライ・リリー)
2年間のがん原性試験で、…(ヒトの血漿中曝露量の143倍)の投与により甲状腺C細胞腺腫の発生率の増加が雌ラットで認められた…。

●エキセナチド:ビデュリオン(日本イーライ・リリー) ※バイエッタの週1回投与タイプ
エキセナチド量として0.3、1.0、3.0mg/kg/回の用量で本剤を2週に1回投与したがん原性試験において、全投与群のラットで甲状腺C細胞腫瘍(腺腫及びC細胞癌の合計)の発生頻度が増加した(ヒトの血漿中曝露量の1.1~16.2倍)。

●リラグルチド:ビクトーザ(ノボ・ノルディスク)
ラット及びマウスにおける2年間がん原性試験において、非致死性の甲状腺C細胞腫瘍が認められた。
血中カルシトニン値上昇、甲状腺腫、甲状腺新生物等の甲状腺関連の有害事象が臨床試験において報告されてる。

DPP-4阻害薬

●ビルダグリプチン:エクア(ノバルティス)
マウス…104週間反復経口投与がん原性試験において、…(ヒト暴露量(AUC)の199倍)群の雌で乳腺腺癌の発生例数が増加し、…雄で血管肉腫の発生例数が増加した。104週間反復経口投与…ヒト暴露量(AUC)の199倍投与群の雌マウスで乳腺腺癌の発生例数が増加し、…群の雌及び…群の雄で血管肉腫の発生例数が増加した。

●アナグリプチン:スイニー(三和化学)
雌雄ラットに…104週間反復経口投与したがん原性試験において、…の雄で肝臓の血管肉腫の発生頻度が増加し、…の雌(60例中1例)で同様の血管肉腫が認められた。また、…の雄で膀胱の移行上皮乳頭腫の発生頻度に増加傾向が認められた。ラットに本剤2000又は1000mg/kg/日を反復経口投与したときの曝露量(AUC)は、臨床での最大投与量(1回200mg、1日2回)の200倍以上又は140倍以上であった。

●シタグリプチン:ジャヌビア(MSD) グラクティブ(小野薬品工業)
雌雄ラットに…を2 年間経口投与したがん原性試験では、…群の雄ラットにおいて肝腺腫及び肝がんの発現率が増加し、同群の雌ラットにおいて肝がんの発現率が増加した…。このラットの投与量は、臨床での最大投与量…の約58 倍の曝露量に相当する。

(薬剤師 小林)

訂正とお詫び
バイエッタ、ビデュリオンを発売元日本イーライ・リリーとしていましたが2013年4月1日にアストラゼネカ(AZ)とブリストル・マイヤーズ(BMS)は製造販売承認を日本イーライリリーから承継していました。