日本小児科学会が、福島の子どもたちの健康障害を検討する組織を作ることを決定(NEWS No.464 p01)

4月12日、日本小児科学会(以下、日児)の代議員である高松勇氏の提案と説得力ある発言によって、福島の子どもたちの健康を検討する委員会ないしそれに準ずる組織が作られることが、日児の最高決定機関である代議員総会で決められました。この組織が作られることは、福島の健康被害に関して学会として一歩突っ込んで検討してゆく姿勢を示したもので、これまでの学会の姿勢から大きく前進したものと評価できます。
昨年の同代議員総会で、被曝線量が150mSv以下は障害がないかのような、日児見解に対する質問への対応として、日児は「ワーキンググループ」を作りました。その検討結果は、昨年10月号医問研ニュースでお知らせしましたように、150mSv閾値説の実質的撤回とも言えるものでしたが、極めて不十分なものであり、討議内容も公開されていません。
今回の日児の検討組織では、討議内容の科学性と公開性、多彩な委員、民主的運営を実現しなければなりません。
ところで、今年の同学会学術集会では、医問研の小児科医は、以下の5つのテーマで発表しました。1)避難者健康相談会(伊集院) 2)甲状腺がん多発(高松)3)被曝線量と甲状腺がん発見率に相関あり(山本)4)被曝による奇形の発生(入江)5)100mSv以下でも障害性有り(林)です。

これらはいずれも図表と説明文を印刷して会場に掲示するポスター発表でした。この発表形式では説明と質疑で5-6分とされていますが、数時間掲示しておけるので、興味のある方はじっくりその内容を検討することができます。
この掲示の時間に、日児の五十嵐会長がこれらの発表を事前に見に来て、発表者との交流では、よく勉強されていると感想を述べ、ドイツ・ベラルーシへ発表者のうち3人が行ったことに感心されていました。
74人の甲状腺がんの発見とそれが報道番組で特集され社会的関心が高まっていること、津田岡山大学教授の科学的論文などがマスコミにも取り上げられ、健康診断要求署名の広がり、ドイツで医問研の意見が海外の著名な専門家にも広く紹介されたことなどの力が、この対応の基本にあるかと考えられます。

そのドイツ・ベラルーシ訪問を紹介する集会が学会とは別に開催され、少人数ながら、九州などの熱心な方々の参加を得て、訪独3人から報告が、2時間なされました。
最後に、年間20mSv以下の地域への帰還半強制に反対する意見を、日児に要請する提案が了承されました。

(はやし小児科 林)