医療トピックス 厳罰化を深化させた少年法「改正」に抗議する!(NEWS No.464 p06)

有期刑の上限引き上げなど厳罰化を柱とする「改正」少年法が成立した。
現行法は、成人なら無期刑となる犯罪の場合でも、犯行時に18歳未満であれば10~15年の期刑にできると規定しているが、「改正」法は上限を20年に引き上げた。
判決時20歳未満の少年に対する不定期刑についても、刑期の下限、上限ともに5年長くする。
少年が刑期を終える頃には社会も大きく変わり、外部の環境に順応することが大人以上に難しくなるだろう。
検察官の立ち会いは2000年の少年法「改正」で、殺人や強盗などに限って認められたが、今回は窃盗や傷害にも対象を拡げた。検察官の関与拡大は、教育や保護育成を重視する少年法の理念に反する。
少年法は本来、少年の更生・立ち直りのためにある。少年の可塑性の高さを考えると合理的な理念といえ、厳罰化は少年法の理念に反する。
少年犯罪は減少傾向にある。
殺人の少年検挙数は1951年の448人に対して2011年は59人、強姦では1958年の4649人に対して2011年は79人と、いずれも著しく減少している。罪を犯した少年の多くが虐待やいじめを受けた体験をもつ。彼らに居場所がないのが少年犯罪の根本にあり、教育や福祉的な育てなおしのシステム構築抜きに少年犯罪の問題は解決しない。
少年法の厳罰化が進むのは、被害者や被害者遺族の声が反映された結果だ。被害者遺族に支給される金額は平均すると遺族1名あたり300万円程度で、被害者・遺族救済制度が貧困なのが問題なのは事実だが、加害少年の処分とは別建てで被害者救済システムを整備すべきであり、厳罰化は被害者救済にとって代わるものではない。厳罰化の根底には、社会にとって異質の者を排除していく考えがある。
可塑性の高い未熟な少年を、罪を犯したことをもって排除しようとする厳罰化の進行は、生きにくい社会を形成することになり、社会全体にとっても不幸だ。
少年犯罪には、厳罰化よりも予防が肝腎であり、虐待等による愛情不足がなくなるように、子どもの虐待防止策を充実させることが必要である。また、不幸にして罪を犯してしまった少年に対して、二度と罪を犯すことがないように、治療や教育も含めた専門的な対処をすることで、再犯防止を重視していく仕組みが必要と考える。
(いわくら病院 梅田)