くすりのコラム HPVワクチンのウイルス外殻蛋白に害はないのか?(NEWS No.464 p08)

皮膚や粘膜に潜伏持続感染状態のHPVは増殖(ウイルス外殻蛋白形成)しません。潜伏持続感染が起きている間はHPV遺伝子発現は抑制され、細胞に対し障害を与えたり免疫系を刺激することもありません。HPVワクチンではアジュバント添加によりウイルス外殻蛋白が長期間、体に作用することになります。

ワクチン接種による被害はばらつきのある発症までの時間、多岐にわたる症状を呈することなどから害が認められず、予防接種・ワクチン副反応検討部会は「接種時の痛みが心身の反応を引き起こした可能性を否定できない。」と意見をまとめました。しかし、自己免疫疾患や疼痛モデル動物作製論文ではワクチン被害症状と似た病型、病態が書かれています。アジュバントによる害は取り上げられ検討されてきましたがウイルス外殻蛋白が長期間作用したときの安全性は試験されているのでしょうか?
HPVワクチンの作製方法はメーカーにより異なりますが遺伝子組み換え技術によってHPV-L1カプシド蛋白質を本物のHPVの外殻蛋白と同じ立体構造VLPにしたものを抗原としています。DNAを含まず体内で複製することがない外殻蛋白にアジュバントを添加することで血中抗体価をより「高く」「持続的に」誘導しています。アジュバントやワクチンに含まれる不純物の毒性が想定され試験が行われています。しかし実は外殻蛋白がもつMolecular mimicryが自己免疫に作用しているのではないでしょうか。(Molecular mimicryとは病原体蛋白と自己蛋白の間に一次構造や高次構造の類似性が存在することをさします。)

2つの多発性硬化症(MS)モデル

自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は抗原として中枢神経に存在する蛋白由来ペプチドを用いて髄鞘(myelin)に対して免疫反応を引き起こし脱髄や神経組織障害を起こします。タイラーウイルス誘導による免疫性脱髄性疾患(TMEV-IDD)では持続感染や脱髄について研究されていますがそのメカニズムは未だ解明されていません。髄鞘とタイラーウイルスの外殻蛋白の間にMolecular mimicryが想定されこの蛋白が重要視されています。

多発性硬化症(MS)モデル動物の作製

日本チャールス・リバー社によると自己免疫性脳脊髄炎(EAE)をマウスで誘導するときマウスの系統、感作抗原の種類により急性単相性、慢性再発性、慢性持続性の病型が現れ、週齡、性別、飼育環境(清浄度など)、抗原種類、ペプチドの純度、エマルジョンの質、免疫操作などの技術的な要素、季節による変動(冬には軽症化、春から夏にかけて重症化)がEAEの病態に影響すると報告されています。

不十分なワクチン毒性試験

HPVワクチン開発で使われる動物感染モデルではウサギにはワタノオウサギパピローマウイルス(CRPV)が、ウシにはウシパピローマウイルス(BPV)が使われています。ヒト以外の動物にはおそらくHPVに感受性がないのでしょう。HPV病態モデル動物を作製することすら難しく様々な研究がされています。審査報告書ではアジュバントと外殻蛋白の毒性を調べるためウサギやラットを使った試験がされていますが系統種の記載もありません。EAEモデルを作製する時に使用する抗原に対して感受性のあるマウスの系統は細かく決まっています。
当然ワクチンの毒性試験をするのであれば感受性の高い系統種を特定して試験をしなければいけません。そもそもHPVカプシドにマウスの中枢神経組織とMolecular mimicryがなければ害を動物で再現することはできないかもしれません。このように安全性を全く証明できていないものが認可されているのです。

(薬剤師 小林)