福島の小児甲状腺がん89人発見され、うち51人(一人は良性)が手術され、地域差がより明確になった(NEWS No.465 p06)

福島県は5月19日に3月までの健診結果を発表しました。
癌患者は89人に増加しました。有病期間6年、100万人に11人の発症という高い発病率と比較しても、23年度は5倍、24年度は5.8倍になります。
今回、主に増えたのは「25年度」の結果です。この年度の対象地域は、いわき市など強く汚染された地域と、会津地方のようにそれほどでない地域が含まれています。
いわき市など海に近い地域から、中通といわれる海と山との中間の帯状の地域では、検査確定率はかなりの割合になります。
しかし、地図の猪苗代湖、会津若松氏より西側の会津地方はまだまだ半分程度の結果しか出ていません。それでも、全体的には2次検査対象者の78.0%が2次健診を受診、その82%が結果が確定しています。(下表)
1次健診受診者数2次検診対象者数2次健診受診者数2次健診修了者数がん患者数手術者数
23年度419812181931891412+1
24年度1409469918898585436
25年度112584861672551212
(うち会津地方)(32208)(209)(102)(36)(1)(?)
2955112070175415988951
25年度と比較すると、24年度での発見率は、Relative Riskは1.5倍(95%信頼区間:0.917-2.514)となります。会津若松市より西の会津地方では  32208人の健診で、2次健診修了者209人の対象者中36人しか終わってはいませんが、たった1人(しかも中通に近い下郷町)でしか見つかっていません。
岡山大学津田教授は2次検査が70%以上終了している地域での比較で、会津地方を1としたオッズ比を計算して、明らかに地域差が出たと、私信で伝えてくれています。
この際、25年度は被ばくからすでに3年たったデータであり、被曝が原因なら23年度24年度より多く発見されたはずなのに、実際は少なかったことになります。
もう一つの問題は、手術が51人にもなったことです。この意味は、約30万人で、少なくとも51人が発病したので、手術をしたものと考えると、100万に当たり、約160人の発病率になります。逆に、福島県が主張するように、この発見が単なるスクリーニング効果であるのなら、不要な手術を50人にもしたこととなり、これも許せないことです。
今後は、山本氏が前号で紹介した、被曝線量との相関の問題がよりクローズアップされます。山本氏の分析結果を待ちたいと思います。
(はやし小児科 林)