くすりのコラム 日本のジェネリック審査制度は大丈夫?(NEWS No.465 p08)

第一三共は後発薬事業の世界展開のため買収したインドの子会社ランバクシー・ラボラトリーズを実質売却することを発表しました。米国食品医薬品局(FDA)はランバクシー・ラボラトリーズのトアンサ工場で製造された原薬に対し品質に問題があるとして、米国への輸入禁止の措置を取っていました。
1つの先発に対してあまりに多くのジェネリックが認可されている現状やこのような買収劇の失敗を見ると日本のジェネリック審査体制は信頼できるものなのか不安を感じます。
でも同じ成分の薬を作るだけでなぜ品質の差が生まれるのでしょう?
特許制度
品質の差は薬を作るときの原料となる原薬の違いや特許制度が関わっています。薬の特許は、主に4種類あります。有効成分である化学物質、効能効果、製造方法、製剤や剤形のうち新しく見出されたものや工夫に対しそれぞれ「物質特許」「用途特許」「製法特許」「製剤特許」が与えられています。
一番初めに物質特許を申請するため物質特許と他の特許の有効期間に時差が生じます。
製法特許の有効期間には先発品と同じ方法でジェネリックをつくることができません。
製法が違えばその類縁物質は先発で確認されたものと違うものがあっても不思議ではありません。
製造工程変更で不純物も変わる
1989年に米国起きたトリプトファン事件では製造工程の変更により新たな不純物が副産物として含まれました。それによって好酸球増加筋肉痛症候群(EMS)を引き起こしたとして製造元の昭和電工が多額の賠償を請求されました。製造工程が変更された特定のロットとEMS発症に疫学的因果関係が立証されましたがEMSの発症機序と原因は現在もわかっていません。製造工程変更によって不純物の量も増加したにもかかわらず、活性炭を節約したことや精製工程を簡略化したことが原因とも言われています。
日本の曖昧な不純物規制
厚生労働省の「ジェネリック医薬品への疑問に答えます」では「ジェネリック医薬品の審査の際に省略される試験項目は、先発医薬品において既に確認済の内容であり、試験項目が先発医薬品と比べて少なくても、先発医薬品と同等の有効性や安全性を有すると判断することができます。」とあります。
一方でPMRJ(一般財団法人レギュラトリーサイエンス財団)はジェネリック医薬品申請の際、不純物管理にICH Q3A(新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドライン)、Q3B(新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン)の適用を行政通知において明確に示すよう提言しています。
提言の中に『「原薬及び製剤の不純物は、それぞれICH Q3A、Q3B等により、安全性に問題がないことを科学的根拠をもって説明すること」とされているが、公文において申請資料の取扱いが明確に規定されていない…USPやEPのように薬局方中で不純物や類縁物質についての考え方を述べていない。』とあります。
ジェネリック医薬品は必要です。薬代のためにダブルワークをする患者さんもいます。
しかし国はジェネリック促進のために審査体制強化にお金を使わずジェネリック推進ができた現場にご褒美として保険点数でお金をばらまくことにしました。製造法や精製法が異なるとき類縁物質や不純物は先発のそれとは違ってきます。国民の健康を害することがないよう医薬品を審査するのが国の仕事ではないでしょうか。
(薬剤師 小林)

第一三共は後発薬事業の世界展開のため買収したインドの子会社ランバクシー・ラボラトリーズを実質売却することを発表しました。米国食品医薬品局(FDA)はランバクシー・ラボラトリーズのトアンサ工場で製造された原薬に対し品質に問題があるとして、米国への輸入禁止の措置を取っていました。1つの先発に対してあまりに多くのジェネリックが認可されている現状やこのような買収劇の失敗を見ると日本のジェネリック審査体制は信頼できるものなのか不安を感じます。でも同じ成分の薬を作るだけでなぜ品質の差が生まれるのでしょう?
特許制度品質の差は薬を作るときの原料となる原薬の違いや特許制度が関わっています。薬の特許は、主に4種類あります。有効成分である化学物質、効能効果、製造方法、製剤や剤形のうち新しく見出されたものや工夫に対しそれぞれ「物質特許」「用途特許」「製法特許」「製剤特許」が与えられています。一番初めに物質特許を申請するため物質特許と他の特許の有効期間に時差が生じます。製法特許の有効期間には先発品と同じ方法でジェネリックをつくることができません。製法が違えばその類縁物質は先発で確認されたものと違うものがあっても不思議ではありません。
製造工程変更で不純物も変わる1989年に米国起きたトリプトファン事件では製造工程の変更により新たな不純物が副産物として含まれました。それによって好酸球増加筋肉痛症候群(EMS)を引き起こしたとして製造元の昭和電工が多額の賠償を請求されました。製造工程が変更された特定のロットとEMS発症に疫学的因果関係が立証されましたがEMSの発症機序と原因は現在もわかっていません。製造工程変更によって不純物の量も増加したにもかかわらず、活性炭を節約したことや精製工程を簡略化したことが原因とも言われています。
日本の曖昧な不純物規制厚生労働省の「ジェネリック医薬品への疑問に答えます」では「ジェネリック医薬品の審査の際に省略される試験項目は、先発医薬品において既に確認済の内容であり、試験項目が先発医薬品と比べて少なくても、先発医薬品と同等の有効性や安全性を有すると判断することができます。」とあります。一方でPMRJ(一般財団法人レギュラトリーサイエンス財団)はジェネリック医薬品申請の際、不純物管理にICH Q3A(新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドライン)、Q3B(新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン)の適用を行政通知において明確に示すよう提言しています。提言の中に『「原薬及び製剤の不純物は、それぞれICH Q3A、Q3B等により、安全性に問題がないことを科学的根拠をもって説明すること」とされているが、公文において申請資料の取扱いが明確に規定されていない…USPやEPのように薬局方中で不純物や類縁物質についての考え方を述べていない。』とあります。
ジェネリック医薬品は必要です。薬代のためにダブルワークをする患者さんもいます。しかし国はジェネリック促進のために審査体制強化にお金を使わずジェネリック推進ができた現場にご褒美として保険点数でお金をばらまくことにしました。製造法や精製法が異なるとき類縁物質や不純物は先発のそれとは違ってきます。国民の健康を害することがないよう医薬品を審査するのが国の仕事ではないでしょうか。

(薬剤師 小林)