小児甲状腺がん増加は放射線被ばくによることがますます明らかに(2014年5月19日発表データの分析)(NEWS No.466 p02)

【1】甲状腺がん異常多発は続いている
5月19日福島県民健康調査会議の発表によると、3月31日現在、事故当時18歳以下の甲状腺がんは増え続け89名に達した。
15歳―18歳54名、6―15歳未満36名(良性1名を含む)である。県や国はチェルノブイリに比べ低年齢層にはないというが、福島県では2008年から2010年までの15歳未満の甲状腺がんの罹患数は0である。36名はあまりに多い。また、15―18歳は全国罹患率の実に150倍以上の有病率である。
スクリーニング効果により将来見つかるであろうがんを早期に見つけただけというのが彼らのいいわけである。
このまやかしの論理に対する、もっとも明確な対案は、甲状腺がんと放射線との量的関係を明らかにすることである。この点について、4月号で当時の公開資料を用いて分析したが、今回引き続き分析を加えたので発表する。
【2】福島でのがん有病率と放射線量との関 係について
前回同様、原発事故後4か月間の外部被ばく実効線量(200万人のうち50万人の集計)と、甲状腺有病率との間での線量容量関係の有無を検討した。加えて文科省、県が2011年4月実施した県下小中学校の校庭線量、県発表の土壌ヨード131、セシウム137との関係についても分析した。検査時期に応じて8地域の群分けを示す。
また、調査が2年以上に及んだので、一次検査受診者数と、補正人年の両方を用いて検討した。
【3】分析結果
直線回帰分析では前回同様甲状腺がん有病率と平均外部線量との間に有意の関係を認めた。
59市町村すべてを対象にしたロジスティック回帰分析でもP=0.03と、前回同様、線量反応関係を認めた。
新たに校庭線量、土壌ヨード131、土壌セシウム137に対するがん有病率との単回帰関係も検討した。補正人年での校庭線量、対数セシウムとの間で8群での有意回帰が認められた(結果略)。
ついで各線量変数について、中央値で二分した放射線量と市町村別甲状腺がんの有無との2×2分割表のオッズ比を分析した。
それぞれの放射線量をあらわす変数について、高線量/低線量に分けた場合、土壌ヨード131を除く校庭線量、土壌セシウム137、外部線量推計とのいずれにおいても甲状腺がんの有無と線量とのオッズ比の95%有意差を認めた。
【4】懸念
県の意識的サボタージュのもと、15-18歳の一次検診受診率の低下が著しい。
2013年度実施の会津地方に至っては20%を下回る。いつでもどこでも健康診断を要求していかなければならない。
【5】結論
今回の分析からも、福島の小児甲状腺がんといくつかの放射線量変数との間にはっきりとした容量線量関係が認められた。前回の外部線量推計に加えて、今回の分析では土壌セシウム137、校庭被ばく線量との間にも甲状腺がんは有意な関係を示した。県、国はこのような結果を謙虚に受け入れ、既存データでの、がんと線量との関係についての疫学分析を早急に行うべきである。そのことがこれ以上の被曝を防ぐための方針につながり、不安を抱えたまま残ったり避難したりや、検診に行けなかったりなどの現実を生み出している棄民政策を転換する根拠を与えることになる。
参考文献、資料
  1. 第15回福島県民健康会議調査
  2. 国立がん罹患モニタリング集計
  3. 福島県及び近隣県の2200箇所で採取された土壌試料の核種分析結果(H23.6.14換算)
  4. 環境放射線モニタリング結果(平成23年4月5日実施分)
(写真:20140615)講演中の山本医師
(山本英彦)