くすりのコラム 子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)免疫とは?(NEWS No.469 p08)

「子宮頚がんワクチン」(HPVワクチン)は自然ではありえない高い血清抗体価を長期間維持させるものです。日本線維筋痛症学会はHPVワクチン後に起こる全身の痛みや失神、けいれん、記憶障害などさまざまな症状を「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」としてまとめて捉えるよう提唱しました。
日本神経免疫学会学術集会では子宮頚がんワクチン接種後にさまざまな症状がでている32人の髄液を検査したところ、免疫異常が生じ脳に様々な障害を引き起こしている可能性が報告されました。

「免疫異常」という報告が2つの学会から出ていますが副反応検討部会ではベースとなる個々の免疫能を検討していません。厚生労働省はあくまでワクチンに害はないとして、全く意味のない「心身の反応」「転換性反応」が副反応検討の資料としてネットに掲載されています。そこで個々の免疫能を考える必要性について考えてみました。

「寄生虫なき病」モイセズ・ベラスケス・マノフ(著)では感染症に有利な強い炎症反応を持つ者はマラリアに対抗するよう進化し、逆に寛容な免疫反応をもつ者は寄生虫に対し寛容に進化をしてきたからではないかと考察しています。またヒトとともに共存してきた寄生虫や細菌やウイルスの存在があって初めて免疫がコントロールされてきたが、近年の衛生状態の向上や過剰な抗生物質の使用により体内の生態系が乱れたことが自己免疫疾患、アレルギーなどの近年増え続ける病気の原因ではないかと詳細に分析しています。

日本チャールズ・リバー社は自己免疫性脳脊髄炎(EAE)をマウスで誘導するときEAEの病態に影響を与えるものの1つとして飼育環境(清浄度など)をあげています。全く同じ遺伝子をもつマウスであっても飼育環境の違いによってリンパ球の一種であるT細胞の一つの量に違いがあることがわかっています。プロバイオティクスを研究しているヤクルト中央研究所のHPには興味深い研究内容が紹介されています。(以下引用)

動物(ヒトでは不明)の常在菌の1つであるセグメント細菌がT細胞の一種であるTh17を誘導することが明らかになり注目されています。Th17は細菌や真菌に対する感染防御に役立っていますが、一方でその行き過ぎた応答が自己免疫疾患である慢性関節リウマチやクローン病・潰瘍性大腸炎などに関わることが知られています。したがって、腸内のセグメント細菌の働きをコントロールできれば、感染症や自己免疫疾患の予防や治療に役立つ可能性が考えられます。

反対に東大の研究チームは腸管におけるクロストリジウム属が制御性T細胞を誘導していることを報告しています。東大HPには「制御性T細胞を誘導するヒトの腸内細菌の同定と培養に成功 -炎症性腸疾患やアレルギー症に効果」と見出しが出ています。

有効性評価では自然感染の97倍もの血中抗体価が検出されたことが報告されていますが同等の抗体価が全ての女の子に検出されたのではありません。全くワクチンの抗体価が上がらなかった人もいるでしょう。厚生労働省が害や効果を正しく検討するには、接種後になんの症状も現れなかった女の子も含め抗体価や免疫能を調査しなければいけません。

薬剤師 小林